改訂版 医療安全対策の常識と工夫(5)

改訂版 医療安全対策の常識と工夫(5)

「調停」と「訴訟」は何処がどう違うの?

 「訴訟」は日頃よく耳にする言葉で、特に説明するまでもないでしょうが、「調停」というものも医事紛争を解決する一つの手段とされています。どちらの場合も裁判官の名の下で話が進められていくことに違いはありませんが、「調停」では患者さんはもとより、医療機関のプライバシーも守られます。「調停」はあくまで「話し合いの場」ですので「訴訟」のように患者さんと争うものではないのです。従って、当事者が公にしない限りマスコミに騒がれたり、新聞に載ることは先ずありません。

 「調停」には通常、第三者の医師か法律家が調停委員として同席します。医療機関も裁判所に出頭しなければなりませんが、「調停」はあくまでも当事者間の話し合いの場であり、責任の有無を強制的に問われることはありません。しかし、「調停」での調停案(いわゆる和解案)に両者が同意した場合には、その調停内容は裁判の判決と同等の効力があり、後で「気が変わったから今までの話は白紙に戻して欲しい」といったことは認められていません。つまり、一旦、和解が成立すればその医事紛争は解決ということになるのです。

 「調停」の長所としては「訴訟」に比較して解決までの期間が短く、また、弁護士費用等も安価で済むといった労力・経済的なメリットがあげられます。ただ、注意しなければならないのは、「調停」で出される調停案は必ずしも医学的な因果関係を踏まえているとは限らないこともあるようです。これには弱者(この場合は患者を意味する)救済といった社会通念が働いている節が見られます。こういったことから、医師として調停案に安易に応ずることは問題ですが、紛争解決のための一つの手段にはなり得るものです。

 次回は、調停を申し立てられた場合についてお話しします。

ページの先頭へ