改定版 医療安全対策の常識と工夫(24)
カルテ記載における留意点
カルテ記載についての留意点など、何を今更と仰る方がほとんどだと思います。しかしながら、実際に医事紛争の様相を目の当たりにしていると、カルテについて問題が浮上することが珍しくありません。そこで念のため、不備のあるカルテについてまとめてみます。
(1)記載内容の不十分、(2)記載漏れ、(3)誤記入、(4)虚偽、(5)改竄。
この中で特に問題になり易いのは(1)と(2)です。医師の言い分としては「時間が足らなかった」「普通はそこまで書きませんよ」というのが大方のようです。医師は多忙でカルテ記載にも一定のルールがないので、やむを得ない場合もあることは、十分に理解できるのですが、実際に医事紛争に巻き込まれると、直接には因果関係のないと思われるカルテ記載についても責任追及されることがあります。
これは、患者側弁護士などが、医学的に過誤を証明することが困難と悟った場合に「説明義務違反」で何とか賠償させようと、矛先を変えることがその主な要因の1つではないかと推測されます。先にお話ししたように、インフォームド・コンセントの内容を再度確認して、一行、一言でもよいので、患者さんに説明をしたことや、そのときの患者さんの返答は書き留めておくことをお薦めします。
(3)の「誤記入」に気づいた場合は、当然、改めなければなりません。ただし、そのページを破棄したり、塗り潰して上書きすれば、後に紛争になった場合に、改竄を疑われても弁解の余地がありません。カルテ記載を改める場合には、誤記入は二重線で取り消し、違う場所に訂正の文言を記しましょう。その際には、必ず訂正した記入日を記載して下さい。この記載がなければやはり改竄を疑われます。
次回はカルテの改竄を疑われるケースについてお話します。