改定版 医療安全対策の常識と工夫(3)

改定版 医療安全対策の常識と工夫(3)

証拠保全を申し立てられたら

 医療機関が患者さん側から、いきなり証拠保全申立をされるケースもあるかと思います。これは国民の権利意識の向上と、医療過誤に関わるマスコミの報道や、患者側に立つ弁護士の積極的な活動によるものが大きいと思われます。

 証拠保全とは患者さん側が、裁判所を通して医療機関側にカルテ等、患者データの開示を要求するものです。証拠保全を申し立てられた場合は、原則として従わなければなりません。ただし、その際ご注意いただきたいのは、カルテ等を院内のコピー機で複写したいとの要望があった場合には、その実費分を請求しても問題ありません。それは経済的な問題ということに留まらず、医療機関側の毅然とした態度を裁判所や患者さん側に示すことにもなるからです。

 また、カルテ等を持ち帰りたいとの要望は基本的に断るべきです。カルテは医療機関側にとっても重要な証拠となるものであり、たとえ一時的であっても院外へ持ち出すことは、紛失など二次的なトラブルを招く原因となり得るからです。

 また、証拠保全の内容に関して、通常はカルテや検査データ等を開示要求されるのですが、稀に院内の事故報告書(インシデント・レポートも含む)や事故調査委員会の議事録等、本来、不適当と思われるものまで、開示要求される場合があります。この場合は、証拠保全申立に従わなくてよいことも想定できますので、先ずは京都府保険医協会へご連絡下さい。

 ※本連載の内容は、『事例で見る医療安全対策の心得』に収載していますので、ご活用下さい。

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