損益差額、病院改善し診療所は悪化/医療経済実調を報告
厚生労働省は10月30日、約1カ月ぶりに再開した中医協総会(会長=遠藤久夫・学習院大教授)に、2009年6月に実施した医療経済実態調査の結果を報告した。一般病院(集計1=介護収益の割合が2%未満の医療機関)1施設当たりの損益差額(医業収支差額)はマイナス4.5%で、前回調査(07年6月)のマイナス5.0%と比べて赤字幅は改善した。一方、医療法人立の診療所(集計2=調査に参加したすべての医療機関の集計)の損益差額は4.4%で前回調査の8.8%から黒字幅が悪化した。08年度の診療報酬改定では、診療所から病院への財源移転が行われており、厚労省は「これで十分かどうかは分からないが、病院の収支の改善は、政策的に意図した結果がある程度は表れている」(保険局医療課)としている。
今回の調査対象は病院が1619施設、一般診療所が2378施設、歯科診療所が1100施設、保険薬局が1539施設で、有効回答率は病院が56.6%(前回57.0%)、一般診療所が44.0%(同45.5%)、歯科診療所が60.1%(同62.3%)、保険薬局が62.8%(同63.2%)だった。前回から集計方法を変更し「介護収益の割合が2%未満の病院」だけの集計を「集計1」とし、病院や診療所を含めて調査に参加したすべての医療機関の「集計2」と区別した。また、従来の改定前年6月の単月データに加え、09年3月末までの事業年度のデータも集計した。
集計1で損益差額を設立主体別に見ると、医療法人は前回の1.4%から2.1%と黒字幅が拡大。国立も前回の0.3%から2.1%と改善した。公立は前回マイナス18.0%からマイナス15.5%となり、赤字幅は縮小したものの、依然厳しい経営状況にあることが浮き彫りになった。
病院の機能別(集計1)では、特定機能病院はマイナス6.0%で、前回マイナス9.8%から赤字幅は縮小。こども病院(小児総合医療施設)はマイナス10.1%で前回のマイナス31.3%から大幅に改善した。一方、DPC対象病院はマイナス5.2%で前回のマイナス1.3%から赤字幅は拡大した。
次期診療報酬改定の重要な基礎資料となる実調の結果報告は従来、中医協・調査実施小委員会に報告した後、総会で議論するというプロセスを踏んでいた。今回は10月1日に任期切れとなった中医協委員の後任の人選が遅れ、前回改定時と比べて1カ月間、中医協がストップしていた経緯もあり、遠藤会長は今後の議論を急ぐ必要があると判断。調査小委を開かないまま総会に報告することにした。(10/30MEDIFAXより)