控除対象外消費税で国を提訴/兵庫県民間病院協の4法人
兵庫県民間病院協会(吉田耕造会長)所属の4医療法人は9月28日、医療機関で発生している「控除対象外消費税」をめぐり、国を相手に損害賠償請求訴訟を神戸地裁に起こした。現在の消費税法が「憲法に反する不当な負担」を医療機関に強いている実態について、裁判を通じて浮き彫りにする方針。同協会によると、控除対象外消費税に関する訴訟は全国で初めてという。
原告は榮昌会(吉田病院)、中央会(尼崎中央病院)、康雄会(西病院)、伯鳳会(赤穂中央病院)の4医療法人。同協会は控除対象外消費税の問題について、司法の判断を求めることを総会で決議しており、代表して4法人を原告として送り出した。
●3年間で1.5億−6億円
代理人の石川正弁護士は会見で、消費税法は医療機関に対して憲法に違反する不当な負担を与えているとし、憲法と国家賠償法に基づき負担分の賠償を求めていく考えを説明した。石川氏によると、2008年からの3年間で控除対象外となった消費税額は、原告の1法人当たり1億5000万円−6億円に上る。ただ、憲法違反に関する審理に集中できるよう、請求額は各法人1000万円の「一部請求」とした。
石川氏は、控除対象外消費税を放置し「著しく不当な特別の負担」を強要することは、「憲法の平等原則」や「職業遂行の自由」に違反し、財産権を侵害するとの見解を示した。控除対象外消費税を診療報酬の改定で解消するとの考え方に対しては、「租税法律主義」に反すると指摘。「消費税の問題を診療報酬改定という行政処分で処理すること自体、法律的に問題であると裁判で主張する」と話した。
裁判の目的は、負担を医療機関にのみ押し付ける制度の変更であるとも強調。石川氏は、新たな制度の具体例として、診療報酬の消費税率を0%とし、控除対象外消費税分が還付される仕組みを挙げた。今回の裁判が現行制度の問題解消の具体策を正面から議論する場となることに期待感を示し、「このままでは地域医療や救急医療を担っている医療機関が破綻してしまう」と訴えた。
●訴訟通じ市民にも訴える
原告の1人である同協会の吉田会長は、消費税が非課税のままでは病院経営を圧迫し、高額医療機器であるMRIの購入やメンテナンスなど、診療環境の整備・維持に投資できない状況に陥ると強調。「医療の崩壊をどう防ぐか。非課税を改めるためには市民の理解も必要で、訴訟を通じて訴えかけていく」と述べた。(9/29MEDIFAXより)