捜査機関への通知、判断基準を明示/死因究明で厚労省研究班
厚生労働省が検討を進めている「医療安全調査委員会(仮称)」をめぐる議論で、調査委から捜査機関への通知対象として示している「標準的な医療から著しく逸脱した医療」の具体的な判断基準を盛り込んだ報告書を、厚生労働省研究班がまとめた。判断基準は「故意に近い悪質な医療行為に起因する死亡、または死産の疑いがある場合」とし、(1)医学的根拠のない医療(2)著しく無謀な医療(3)著しい怠慢―がそれに当たると解説。それぞれの具体例を示している。近く研究班ホームページに掲載する予定だ。
「医学的根拠のない医療」については、根拠がなく独断で効果的と考えた医療行為をして、患者が死亡した場合とした。具体例として、腹痛を訴えて救急外来に来院した患者に対し、虫垂炎を疑わせる所見がないにもかかわらず虫垂炎手術を行い、術中に誤って消化管損傷を起こして死亡させた事例などを挙げている。
「著しく無謀な医療」としては(1)危険性が少なく有効なほかの選択肢があることを知った上で、危険性が高い医療行為を行った場合(2)その医療技術をまったく習得していないにもかかわらず独断で医療行為を行った場合─を挙げた。「著しい怠慢」は致命的になる可能性が高いことに気付きながら何もしなかった場合とした。
ただ、通知の対象になり得る医療行為があっても、緊急的な措置が必要だった場合や離島などの環境も考慮し、捜査機関への通知対象にならないこともあり得るとしている。
報告書は、2008年度の厚労科学研究「診療行為に関連した死亡の調査分析に従事する者の育成及び資質向上のための手法に関する研究」の分担研究班がまとめた。捜査機関への通知は、医療者の倫理に照らし「故意に近い悪質度の高さ」を判断することが適切とし、「特定個人の責任に帰されるべきか」の観点から通知範囲を検討していた。
一方、医療機関から調査委への届け出については、第3次試案で判断基準として示されていた「死亡を予期できたかどうか」を、「一定の確率で発生する合併症として医学的・合理的に判断できるか」との表現に明確化すべきとした。
また、「誤った医療を行ったことが明らかか」については「判断に医学的専門性を必要としない、誤った医療を行ったことが明らかか」とするよう提案した。(4/27MEDIFAXより)