抗議談話/社会保障制度改革推進法に抗議し、即時法改正を求める  PDF

抗議談話

社会保障制度改革推進法に抗議し、即時法改正を求める

 8月10日、消費税増税法を含む社会保障・税一体改革関連法が成立した。増税法案はもとよりだが、社会保障の根幹を揺るがす社会保障制度改革推進法の成立は、さらに看過しがたい。成立に手を貸した議員は、条文内容をよく吟味されたい。各党は、同法の重大性に鑑み、即刻法改正を求めるべきである。

国民皆保険「堅持」の方針を捨てるのか?

 同法は、国や厚労省が、これからの医療や社会保障をどう考えているかについて、わかりやすく示した。同法は第6条(医療保険制度)で、今後の医療制度を「原則として」全ての国民が加入する仕組みとして維持するとした。これは、我々の国民的合意である国民皆保険「堅持」の方針を180度転換するものである。我が国の皆保険制度は、全ての国民に公的医療保険への加入を保障し、保険で十分な医療を提供することをめざす制度である。この目標を国や厚労省は捨て、制度は原則維持という方針に転換したのである。今後は、保険料未払い者を、保険適用外として制度化していくつもりなのか?医療保険の財政が厳しければ、「例外的に」医療保険の対象にならない医療技術や薬剤が増えていっても仕方ないというのだろうか?

 地元議員の中には、「皆保険堅持は、当たり前だからあえて書いていないだけ」という者もいるようだが、それならその趣旨通りに、即刻明文改正するべきである。

保険料財源だけで賄うことを求め、公費負担の役割は縮小ということか?

 また、同法は、第2条において社会保険への公費負担の役割を大きく後退させた。我が国の社会保険は、負担能力に関わらず全ての国民を包摂する制度である。国民負担の原則は、税でも保険料でも応能負担だが、この「能力に応じた負担」は、国民生活を破たんからは守るが、一方で制度を維持・機能させようと思えば、国や自治体からの公費負担を必要とする。それが、社会保障制度としての社会保険を機能させる唯一の道だからである。

 しかし同法は、公費負担を社会保険料に係る国民負担を適正化するためのものと定義し直した。つまり、「保険料で財源は賄ってもらうが、負担があまりに過度だとまずいので、緩和する必要がある場合には、その分くらいは公費で出しますよ」ということだ。これで制度は守れるのか?

「自己努力・地域・家族」で、本当に問題が解決するのか?

 さらに、この公的責任の後退と表裏の関係で、自己努力や地域・家族の助け合いを強調するという社会保障理念の変質も明記された。なにがしかの社会的な手助けを必要とする場合、それを求める相手は、自分を含めた地域や家族であって、国や自治体による公的な社会保障ではないというのだろう。医療や介護保険、生活保護の給付範囲見直しが方向性として示されている。

国・厚労省・議員は、現場の医療者を含む当事者の声に耳を傾けよ

 今後、社会保障・税一体改革方針に基づく制度改革は、同法を根拠法に具体化される。国や厚労省の構想に沿って「社会保障制度改革国民会議」において結論が出される。同会議は、国民会議とは名ばかりで、社会保障のどの分野の当事者も参加を予定されていない。これまでもこれに近いことは繰り返されてきたが、今回のそれは、国民軽視、非民主主義の極みである。

 今あげた諸点を見ただけでも、同法がいかに問題か、理解できるのではないか。

 冒頭でも述べたとおり、各党議員には同法を再度吟味し、即刻必要な法改正に着手いただくよう要求する。

2012年8月21日
京都府保険医協会
理事長 関 浩

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