抗がん剤被害救済を制度化へ/政府、イレッサ和解拒否で
肺がん治療薬「イレッサ」の副作用をめぐる訴訟で政府は1月28日、東京・大阪両地裁が示した和解勧告を拒否することを決め、上申書を提出した。細川律夫厚生労働相は会見し、「国に違法性があったとの指摘は当たらない」と述べた。一方で、原告団からの要望を受け、抗がん剤副作用死救済制度の検討や、添付文書の法的位置付けを明確化するなどの方針を表明した。
イレッサ訴訟では、アストラゼネカもすでに和解勧告を拒否することを発表しており、大阪地裁が2月25日、東京地裁が3月23日に判決を言い渡す見通し。
裁判で原告団は、薬害再発防止策の実施や被害者救済、イレッサの適用範囲制限などを求めている。このため細川厚労相ら関係閣僚はこれまでに、新たな抗がん剤を安全・早期に提供するための対策を協議。▽がん医療の充実▽薬事法改正等による医薬品安全対策の強化▽抗がん剤副作用死救済制度の検討▽イレッサに係る適正な再審査―の4点について具体的な検討に入ることを決めた。
イレッサによる致死性の副作用が医師から患者に伝わっていたかが争点になっていることから、インフォームドコンセントの徹底と診療報酬上での取り扱いを検討する。また、がん対策基本法の改正論議の中でも対応を検討する。
●添付文書の法的な位置付けを明確化
2012年の通常国会に提出を予定する薬事法改正案では、添付文書の法的な位置付けを明確化する。また、薬事規制の観点から、医療機関から患者に情報が伝わる仕組みの構築を検討する。
抗がん剤副作用死救済の制度化も検討する。抗がん剤は現行の医薬品副作用被害救済制度では対象外とされているが、与党でも制度面の検討をした上で、国民の合意を得たい考え。厚生労働省は「現行制度にこだわらず、どのような対応があるか議論を広げる」としている。
イレッサの適用範囲については再審査制度に基づき検討する。EGFR遺伝子変異陽性患者では治療効果が高いとのデータを基にする。現在はアストラゼネカが再審査の申請中。最新知見を精査し、薬事・食品衛生審議会の医薬品第二部会で審議した上で対応を決める。(1/31MEDIFAXより)