所得格差の拡大、社会保障で抑える/11年再分配調査
厚生労働省は10月11日、2011年所得再分配調査の結果を発表した。社会保障や税による所得再分配後の世帯間の所得格差は、再分配前と比べ31.5%改善した。過去最高の改善度だった。世帯間の再分配前の所得格差は年々大きくなっているものの、再分配後の所得格差はほぼ横ばいで推移しており、高齢化の進展による格差の拡大を社会保障制度によって抑えている状況が分かった。
同調査は、社会保障の給付・負担と税による所得再分配制度がどれほど機能しているかを調べて政策立案の基礎資料にするため、おおむね3年ごとに実施している。指標にしているのは所得の均等度を表す「ジニ係数」で、0に近いほど所得格差が小さく、1に近いほど所得格差が大きい。11年調査は、東日本大震災の影響を考慮し、岩手、宮城、福島の3県を除く44都道府県で無作為抽出した世帯を対象に、11年7月14日−8月13日までの間に行った。
世帯単位で見た再分配前の「当初所得」のジニ係数は0.5536で、当初所得から税金と社会保険料を控除し、社会保障給付を加えた「再分配所得」のジニ係数は0.3791だった。再分配の改善度は31.5%となり、前回08年と比べ2.2ポイント増加し過去最高となった。要因別では、社会保障による改善度が28.3%、税による改善度は4.5%だった。
当初所得の格差をジニ係数の推移で見ると、1999年調査で0.4720、02年調査で0.4983、05年調査で0.5263、08年調査で0.5318、今回11年調査で0.5536と、年々大きくなっている。理由について厚労省政策統括官付政策評価官室は「高齢化の影響により、ある程度必然的に上がる」と説明した。
そうした状況でも、再分配所得の格差は0.3814(99年)、0.3812(02年)、0.3873(05年)、0.3758(08年)、0.3791(11年)と常に0.38程度で推移しており「高齢化が進んでいるが、特に社会保障制度により所得格差の程度は横ばいを維持している」(政策評価官室)結果となった。
●応能負担なら再分配所得格差は小さくなる
世帯の所得を世帯人員の平方根で割って表す「等価所得」のジニ係数は、等価当初所得0.4703が、等価再分配所得で0.3162となった。改善度は32.8%(前回比3.1ポイント増)で、こちらも過去最高となった。
今後、社会保障制度改革国民会議が打ち出した「世代ごとの負担から応能負担へのシフト」を進めると、所得の多い人ほど大きな負担をするため、再分配所得のジニ係数は「程度は分からないが、小さくなる方向に向かうと予想される」(政策評価官室)。(10/15MEDIFAXより)