戦争と医の倫理 京大で国際シンポ
ドイツは70年の沈黙を経て謝罪
「戦争と医の倫理―ドイツと日本の検証史の比較」をテーマに「『戦争と医の倫理』の検証を進める会」の主催で国際シンポジウムが11月17日、京都大学百周年記念ホールで開催され、260人を超える参加者があった。ドイツの医師ティル・バスチアン氏と医学者の刈田啓史郎氏(元東北大学教授)が報告。司会は検証を進める会代表世話人の西山勝夫氏(滋賀医科大学名誉教授)、座長は小島荘明氏(東京大学名誉教授)と川嶋みどり氏(日本赤十字看護大学名誉教授)が務めた。
バスチアン氏は、ナチス時代に医師によって行われた障害者施設での大量虐殺を告発。そうした行為に加担していたとされる人物が、連邦医師会の会長を務めるなど、過去の清算についての議論が行われてこなかったと報告した。刈田氏は、731部隊による生体実験など戦時中の医学犯罪が免責され、戦後の医学界において指導的地位についたことで、反省や検証をすることなく深刻なモラルの低下をきたしたと指摘。
しかし、ドイツでは精神医学精神療法学会が2010年11月26日に70年間の沈黙を破り3000人の医師が参加した追悼集会を開催。ナチス時代に精神科医によって死に追いやられた25万人以上の精神障害者に謝罪表明が行われた。ドイツ医師会も12年5月22日に過去の行為に対し謝罪し、行為の検証を進めていくことを決議。こうした取組みが日本の医学界・医療界にも欠かせないと報告した。
日本でも検証と反省を
最後に、医学者・医師の戦争加担についての公式の検証と反省を日本医学会に要請する2012年京都「戦争と医の倫理」の検証を進める宣言を確認、検証を進める会事務局長の住江憲勇氏(保団連会長)が読み上げた。
なお、パネル展示も11月16日から21日まで京大構内で開催され、多数の見学者が訪れた。