憲法25条と社会保障に関する諸法の綻びを繕う理念法として/関 浩・京都府保険医協会理事長

憲法25条と社会保障に関する諸法の綻びを繕う理念法として

関 浩・京都府保険医協会理事長

社会保障が危ない

 2000年に入り政府は、医療のみならずさまざまな公共分野において撤退を試みております。これでは社会保障が危ないと危機感を抱いた我々は、木村前理事長の発案で04年に研究会を発足させました。法律の専門家、研究者、弁護士の方々と熱のこもった討議を重ね、2年半かけて完成したのが、「社会保障基本法(案)」であり、『社会保障でしあわせになるために〜社会保障基本法への挑戦』(かもがわ出版)という本を上梓しております。

 09年3月20日には「いのち輝く、芸術と社会保障のつどい」を開催し、府・市民とともに崩れようとしている日本の社会保障制度を再構築しなければいけないと訴え、また来る9月27日には東京で、「貧困をなくし社会保障を守る『基本法』を考えるシンポジウム」を開催し、全国的に運動のうねりを大きなものにしたいと考えております。

 さて、昨今の風潮を見ますと、これほどまでに人の命が軽んじられている時代はないのではないでしょうか。肉親を殺す、自分の欲望を満たすため、あるいは些細な理由で他人の命を奪うといった事件が、なぜこれほどまでに多いのでしょうか。また日本では、自殺者が11年間連続3万人を超えていると報告されております。つまり毎日90人もの人が自ら命を絶っていることになるのです。その6割が失業、倒産といった貧困に起因するといいます、さらにワーキングプアの増加、生活保護支給の打ち切り、老老介護、独居の果ての孤独死、道連れ死といった記事を目にしない日はありません。

社会保障の理念法の必要性

 日本は、世界から豊かな国だと言われておりますが、現状を見る限り、私にはとてもそうだとは思われません。やはりセーフティネットの網目が粗末で、粗いことが理由に思われてなりません。憲法による健康で文化的な生活を営む権利は、各地の生存権を求める裁判で、最終的には憲法解釈は避けられ、十分な成果は上がっておりません。

 私たちは、やはり社会保障に関連するさまざまな法律と憲法との間に、しっかりとした理念法としての社会保障基本法の存在が必要ではないかと思い至ったわけであります。皆様にはこの趣旨にご賛同いただき、成立に向けて大きなお力をお貸しいただきますようお願いいたします。

ページの先頭へ