憲法を考えるために(51)  PDF

憲法を考えるために(51)

憲法・沖縄・基地

 日本は独立した近代的法治国家と思われている。近代国家における法の体系は、憲法をその頂点とし、その下に法律、条例などの法規範が置かれることで成り立っている(憲法体系)。しかし日本における法の体系は、それとは別に日米安保条約をその頂点に、その下に日米地位協定、刑事・民事特別法などの特別法が置かれる法体系(安保法体系)が併存している。そして安保法体系が、憲法体系を歪めているのが現実であり、それが最も顕著に現れているのが沖縄であろう。

 憲法は国の最高法規として、国と国が締結する条約もまた、憲法との適合性が求められるものである。では日米安保条約〜日本の安全保障のために米軍に基地を提供し、米軍は「極東における(現実には極東の範囲を逸脱しているが)国際の平和及び安全の維持」のために基地を使用し、軍事活動をすることを認めているが、それは憲法9条〜国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄し、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しないと定めた国の原則と深刻な矛盾をはらんでいる(砂川事件において最高裁は、統治行為論として憲法判断を回避した〜安保法体系を違憲審査の枠の外に置いてしまった)。

 日米間には日米安保条約、そしてその具体化としての日米地位協定が存在する。しかし、この地位協定は基本的には近代的法治国家における法の支配に抵触する恐れがあると言われている。地位協定は「絶対主権免除法理」(半世紀以上前の考え方)〜派遣国(米国)の軍隊には、その受け入れ国(日本)の司法・行政権は及ばない〜に基づいている。これは独立した国としては現代ではきわめてまれであり、世界は「制限主権主義」〜派遣国の主権は受け入れ国により一定の制限を受ける〜が、当の米国をはじめ、国連もそれを明文化し普遍的になっている。平時において、日本国領土の中に、法の支配が及ばないのは、憲法に違反し、そして何よりも真の独立国として認めがたいのではないだろうか(主題に関するいくつかの文献を参考に書かせていただいたが、書くべきことはなお多く、機会があれば改めて取り上げてみたい)。

(政策部会・飯田哲夫)

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