憲法を考えるために(49)  PDF

憲法を考えるために(49)

二つの談話

 「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が(中略)平和のうちに生存する権利を有することを確認する」(憲法前文)
 「私たちは過去のあやまちを2度と繰り返すことのないよう、戦争の悲惨さを若い世代に語り伝えていかなければなりません。とくに近隣諸国の人々と手を携えて、アジア太平洋地域ひいては世界の平和を確かなものとしていくためには、なによりも、これらの諸国との間に深い理解と信頼にもとづいた関係を培っていくことが不可欠と考えます。(中略)わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」(戦後50年・村山談話)
 そしてそれから更に20年、戦後70年を迎え、我々は憲法前文や村山談話の目指すところに、どれだけ近づき得たのであろう。多くの命と犠牲のもとに我々がようやく見いだした目指すべき方向そのものを、よもや否定はするまい。
 しかし最近見られるようになった、反知性主義(客観性や実証性を軽んじ、自分が理解したいように世界を理解し、異なる意見を持つ他者との対話を無視し、ひとりよがりな決断を重視し、自分が理解したいように世界を理解しようとするため、不適切な発言をしたという自覚ができず、聞く側の受け止め方に問題があると認識してしまうなどが特徴と言われる)や、歴史修正主義(客観的な歴史学の成果を無視し、自らに都合の良い過去は誇張や捏造をしたり、都合の悪い過去は過小評価や抹消をしたりして、自らのイデオロギーに都合のよいように過去に関する記述を修正するものを指し、歴史学用語とは別)のような風潮のもと、特定秘密保護法制定、集団的自衛権容認、紛争地域への自衛隊派遣、武器輸出拡大を可能とする法制定や法解釈などをみていると、戦後70年首相談話が心配になる。
 歴史に逆行するような談話を出さないで下さい、頼みますよ。(理事・飯田哲夫)

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