憲法を考えるために(45)  PDF

憲法を考えるために(45)

改憲へ向かう動き

 憲法九条は様々な解釈の変更―自衛のための必要最小限の実力は合憲=自衛力論に始まり、在日米軍基地攻撃に対する日米個別的自衛権の共同行使論、自衛権行使は日本の防衛に必要な場合は日本の領域に限定されない、あるいはまた海外派兵とは「武力行使の目的を持って武装した部隊を他国に派遣すること」に限定解釈され、それらは海外に兵を送る道を開き、安保再定義から新ガイドライン合意、そして小泉内閣のテロ特措法、イラク特措法へと突き進んできた。しかし、「集団的自衛権行使は憲法違反」が、武器を取って日本領域外の戦線で戦うという最後の一線を超えることなく、それを踏みとどまらせてきた。そして今、安倍自民党は改憲を目指す一方で、「安全保障の法的基盤の再構築」や、「国家安全基本法案」などで、現憲法が禁じている集団的自衛権行使を法律によって事実上可能にしようと目論んでいる。集団的自衛権容認は、憲法九条の有名無実化という最終的解釈改憲が成立するに等しい。

 そのような状況のもと、安倍政権は「国家安全保障会議」に続いて、「特定秘密保護法」を成立させた。まず民主主義において、手続きは重要な位置を占め、国会審議では立法議論の基盤となるに充分な情報、充分な審議、そして少数意見をも尊重した決定などが何よりも大切であるが、今回はそれらがことごとくないがしろにされた。そして民主主義を突き崩す手続きで成立したこの法にあるあまたの問題は、市民の多くがすでに知るところである。憲法との関連に限っていえば、同法は三権分立の実質的な侵害や、何よりも憲法がその二十一条などで保障する基本的人権である「知る権利」や「報道の自由」を侵害する危険が極めて大きい。すなわち憲法に抵触する可能性を秘めた、言葉を変えれば憲法を実質的に改変しようとするものともいえる。「拡大解釈して国民の基本的人権を不当に侵害してはならない」などは、それに対し具体的、実効的な担保が法そのものに明確に含まれていないとき、これらは言葉だけのものになり事実上踏みにじられる可能性が大きいことは歴史の教えるところである。また同法が守ろうとする秘密の中心の一つは、日米共同の軍事行動が可能になったときのアメリカの軍事機密であると思われるなど、これも集団的自衛権の解釈改憲も睨んだ動きと見ざるを得ない。

(協会新聞掲載の同法への抗議文も参照して下さい。またこの記事は保団連新聞「非核平和への希求」原稿に加筆したものです)

(政策部会理事・飯田哲夫)

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