憲法を考えるために(44)  PDF

憲法を考えるために(44)

憲法・領土

 「…いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて…この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる」(憲法)。日本にはいま三つの領土問題があるが、ここでは尖閣諸島を念頭に。領土問題はその双方の国家にとって主権が関わる問題であり、いずれにとっても妥協が難しい。それゆえに武力衝突や、戦争にすらなりかねない危険性をはらんでいる。それはまた領土ナショナリズムとでもいうべきもの―我々は当然に正しく、相手に正当性はない、あるいは双方の利益は相反し、我が利益は国益として守り、相手に利する行為は利敵行為と非難するという二者択一に双方が陥りやすい。しかしそれではグローバル化され相互依存が大きくなっている現在において必要とされる、第三の道は見えてくるはずもない。

 「…国際紛争は平和的手段によって…解決しなければならない」(国連憲章)。これが国際的に最も基本的な国家の行動規範であることは広く浸透しているが、一方でこの基本的な規範を守らない国が存在するのもまた事実である。これを守り行動する国が増えれば国際的な平和に近づくであろうし、その逆もありうる。だからこそ、世界の国々の絶え間ない努力が求められている。規範を守らない国があるにもかかわらず、自国が規範を守り、相手国にもそれを求めるのは、厳しい現実を見すえない理想論にすぎないという声が聞こえてくる。しかし領土にかかわる二国間交渉は、破綻すれば武力衝突から戦争につながる危険をはらんでいることを念頭に置き、そのうえで平和的解決を目指すためには、双方の国を取り巻く国際情勢、双方の国の国内情勢、関係国の歴史に対する豊富な知識と洞察、現在に至る出来事とそれに対する交渉の正確な把握、国際法をはじめ外交交渉の知識、柔軟さと忍耐、そして何よりも武力を用いない、用いさせないという固い決意を必要とする最も成熟した能力が求められるものである。そしてこれは外交担当者だけの問題では決してなく、我々自身が問われることでもある。

 「領土問題の悪循環を止めよう」(大江健三郎氏ほか日本から)。

 「日中関係に理想を取り戻そう」(崔衛平氏ほか中国から)。

(政策部会理事・飯田哲夫)

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