憲法を考えるために(26)/「政権交代(2)」
前回は民主党の憲法に対する方針(マニフェスト)が、「議論をしましょう」にとどまっていて、今後の方針・政策を見守る必要があると述べました。今回はその政権党幹事長の今までの発言を見ていこうと思います。
その発言要旨は、「国連の権威(決議)の下であれば、その国際貢献のために、自衛隊の海外での武力行使も憲法違反にはならない」というものだと思います。
その論拠は、「個々の国が行使する自衛権と、国際社会全体で平和、治安を守るための国連の活動とは、全く異質のものであり、次元が異なるのです。国連の平和活動は国家の主権である自衛権を越えたものです。したがって、国連の平和活動は、たとえそれが武力の行使を含むものであっても、日本国憲法に抵触しない」。つまり憲法は国家間の戦争を禁止しているのであって、国際的な警察活動ともいうべき国連の平和維持のための軍事活動に日本が参加するのは禁止していないという考え方と思われます。
しかしこの考え方は、やはり憲法違反といわざるを得ません。
国連憲章(=条約)と憲法が矛盾したときは憲法が優先します(もしそうでないなら、憲法改正手続きより簡単な手続きで、憲法に反する条約を結ぶこともでき、実質的な改憲になってしまいます)。また国連は世界の中央政府として世界の独立国家からその主権を委譲された訳ではもちろんありません。さらに国連安全保障理事会決定が国際社会に共通の利益をもたらす決定を下しているという保証は残念ながらありません。
憲法は、自衛のため、人道のためなどいわゆる「正義のための戦争」も(もし、それらを認めたら歴史の過ちを繰り返すことになります)、そして国連の活動でも、あらゆる戦争(国家による武力行使)を禁じています。
もちろん、私たちの国も国際社会の一員であり、世界の平和に責任を持ち、国連の平和維持にできる限りの貢献をするべきなのは論を待ちません。そして、(繰り返して書いてきましたが)世界に類を見ない9条を持つ国だからこそできる軍事ではない国際貢献をこそ行うべきだし、そしてそれは充分世界平和に貢献できるものだと思います。
(政策部会理事・飯田哲夫)