患者対応と応召義務を考える
11年度医療安全シンポジウム開く
協会は3月10日、「対応に苦慮する患者さんたち―応召義務について」と題して医療安全シンポジウムを開催した。当日は会員や従事者ら、過去最多の210人が参加、4人のパネリストの話題提供の後、熱心に討論・意見交換した。
シンポジウムは、小笹和也氏(亀岡市立病院医事課長)、安井邦子氏(京都第二赤十字病院看護部長)、鵜飼万貴子氏(米田泰邦法律事務所・弁護士)、樋口範雄氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)の4人がそれぞれの立場で問題提起をした。
病院事務の立場から
小笹氏は、事務担当の立場特有の問題点を指摘。患者から見ると事務の立場は曖昧に見えるが故に、様々なクレームを言われる。特に医療費について、診療報酬制度の説明に苦慮すること等を挙げ、患者対応として、?対応の速さ、?患者と問題点の共有、?対応者の固定―がポイントとなると報告した。
看護師の立場から
安井氏は看護師の立場から、特別扱いを求める患者や、看護師個人への誹謗中傷、セクハラ行為等について実例を挙げた。その上で「モンスター・ペイシェント」と言わない・言わせない、を基本姿勢とすることを強調した。組織としての対応は、事例を共有すること、被害にあった看護師をサポートすることが重要であると報告した。
弁護士の立場から
鵜飼氏は、医療機関側代理人の立場から、事例・判例を紹介するとともに、応召義務について解説をした。更に、医療機関側が弁護士に交渉を依頼するタイミングが重要であることを強調した。
法的意義について
樋口氏は、応召義務について、これを定めた法律は明治7年に発布され、戦後には刑罰の対象外の法律となっていることを紹介。医療現場では必要以上に神経質にならないように助言する一方で、民事では患者側に利用される現状を具体的に示した。更に、政府や行政を当てにするのではなく、今後、医療界がなすべきこととして、応召義務ガイドラインを患者関係者と協力して作成していくことを勧めた。
話題提供の後、質疑応答が活発に行われた。なお、当日の詳細については冊子に纏め、全会員に5月末までに発送する予定。
上左から小笹氏、安井氏、下左から樋口氏、鵜飼氏