急進的制度改革と規制緩和へ 経財諮問会議が復活
政権交代 どこへ向かう社会保障制度改革
総選挙の結果を受けて12月26日、自公連立による第2次安倍内閣が発足した。経済財政諮問会議(以下、諮問会議)を再開させるなど矢継ぎ早に民主党政権からの政策転換を表明。社会保障改革については、公明党との間で社会保障制度改革国民会議(以下、国民会議)の議論促進、生活保護の見直しなどを合意しており、国民会議と3党実務者協議での議論が継続される。(3面に総選挙結果の談話)
小泉時代をほうふつ
安倍政権は1月9日、経済財政政策の司令塔として諮問会議を3年半ぶりに復活させ、中長期方針を定める「骨太の方針」を6月にもまとめることを表明した。また車の両輪として日本経済再生本部を設置し、その下に国民会議と竹中平蔵慶応大教授らがメンバーの産業競争力会議を置く。規制改革会議も復活させる。
かつて小泉政権下で諮問会議が新自由主義による構造改革や歳出削減を進めたように、官邸主導による政策決定を狙うとみられる。
国民会議に強い権限
一方、国民会議は旧政権下で11月30日に初会合を開き、12月7日には第2回が開かれている。
国民会議は、(1)民自公3党合意で成立した社会保障制度改革推進法に基づいて行政組織として内閣に設置されたもので、社会保障審議会などよりも高位の位置付けとされる、(2)委員構成において医師会などのステークホルダー(利害関係者)を排除、(3)「自立・自助」重視など自民党色の強い推進法の考え方に基づいて医療・介護・年金・少子化対策の4分野(下表)について議論を進める―という特徴をもつ。
社会保障制度改革国民会議の検討項目(医療・介護を抜粋)○医療の改革 (1) 健康の維持増進、疾病の予防及び早期発見等を積極的に促進するとともに、医療従事者、医療施設等の確保及び有効活用等を図ることにより、国民負担の増大を抑制しつつ必要な医療を確保 (2) 医療保険制度について、財政基盤の安定化、保険料に係る国民の負担に関する公平の確保、保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等を実施 (3) 医療の在り方について、個人の尊厳が重んぜられ、患者の意思がより尊重されるよう必要な見直しを行い、特に人生の最終段階を穏やかに過ごすことができる環境を整備 (4) 今後の高齢者医療制度にかかる改革 ○介護の改革 介護保険の保険給付の対象となる介護サービスの範囲の適正化等による介護サービスの効率化及び重点化を図るとともに、低所得者をはじめとする国民の保険料に係る負担の増大を抑制しつつ必要な介護サービスを確保 |
復活した諮問会議には経済界から2人の民間議員が入ることから、経団連提言が今後大きな意味を持つ。
委員は社会保障審議会の6人の部会長など有識者15人で構成(下表)。このうち医師は大島氏と永井氏の2人。医師会をメンバーから外したことについては、必要に応じて意見を聴くという意向も示している。伊藤氏は諮問会議の民間議員も兼ねる。そして、事務局長には元厚労官僚の中村秀一内閣官房社会保障改革担当室室長という陣容である。
社会保障制度改革国民会議 委員名簿
伊藤元重 東京大学大学院経済学研究科教授 経済財政諮問会議 議員名簿安倍晋三 内閣総理大臣<議長> |
参院選後には結論
政権交代により、民主党の主張してきた後期高齢者医療制度の廃止などは軌道修正を余儀なくされる。一方、特例で1割に据え置かれている70〜74歳の負担2割化には、7月の参院選への影響を考慮して自民党内に先送りの空気が強い。
国民会議の設置期限は8月21日であり、審議結果を踏まえて必要な法制上の措置を取るとしている。検討課題にあげられた「国民負担の増大を抑制しつつ必要な医療を確保」「保険給付の対象となる療養の範囲の適正化」について、どのような議論が行われていくのか、今後の国民会議の動向から目が離せない。
経団連が給付費の総額管理など提言
国民会議の議論が始まる直前の11月20日、日本経済団体連合会が「社会保障制度改革のあり方に関する提言」を発表した。企業が国際競争力を維持して国が成長していくために、社会保障にかかるコストの削減が必要と主張。直近2回の診療報酬プラス改定も極めて遺憾であると批判している。医療については▽後発医薬品の使用促進▽保険請求の不正に関わる指導・監査の強化▽70〜74歳の患者負担を現行の1割から2割に本則化▽一部の高度医療の適用除外・保険免責制の検討など医療保険の給付範囲の見直し▽医療の標準化と外来診療を含む診療報酬の包括化の推進▽医療保険給付費の総額管理制度の検討―などを提言した。