急病診廃止に関し京都市と懇談 市の責任で確実なアクセス保障を  PDF

急病診廃止に関し京都市と懇談 市の責任で確実なアクセス保障を

 協会は2月8日、京都市長宛1月26日に提出した「京都市急病診療所廃止に関し京都市における医療提供体制に関する質問書」に基づき当局と懇談した。市からは担当部局の保健福祉局医務審査課長・尾本恵一氏と同係長・後藤凡氏、協会からは関理事長と垣田副理事長が出席した。

 京都市に提出した質問書では、次の4点を明らかにするよう求めた。

 (1)京都市は2009年度に「京都市病院群輪番制病院運営事業補助予算」を削減、11年度には「急病診療所廃止」を行い、初期救急・二次救急に関する施策を連続して改変した。京都市は医療提供体制に関するどのようなビジョンを持ってこのような施策変更を行ったのか。

 (2)京都市は、一次救急応需体制について急病診療所は市内1カ所で対応可能と何を根拠に判断したのか。患者受療実態や救急告示病院での受入状況等の調査を実施したのか。その結果はどうであったのか。

 (3)京都市は、東西診療所を受診する住民に対し必要な説明や納得を得る努力をしたのか。

 (4)社団法人京都府医師会への事業委託にあたり、現在の財団法人のように、複数の医療団体で構成する「理事会」を作るのか。また、京都市民の声が反映される場を設けるのか。

 これら4項目について、京都市から尾本課長が回答を述べ、それを受けて意見交換した。

輪番制補助金削減のその後について

 (1)について京都市側より、市は20年度予算で輪番制への予算を、1億1471万2千円から21年度は6855万2千円に削減。20年度まで3500床確保していた年間確保病床数を2000床に削減したが、21年度実績は934床であり、数字的には確保できている。しかし一方で、救急医療への現場の意欲を削ぐとの批判も受けており、その点は認める。

 これに対し協会は、二次救急応需体制を行政が担っている意義は大きい。特にパンデミック等、様々な事態を考えた体制確保が必要。また、予算削減策を進めるなら、その前提に医学的・科学的な政策検討が必要であり、例えば934件の内訳を分析し、現在の診療科名や人数・性別に止まらず、「どういう状況でどういう患者さんが搬送されたのか」という、内実に迫った分析を行うべきである。京都市における医療提供体制ビジョンの中で、重層的な救急医療提供体制があり、その中に輪番制の仕組みは位置づけられているはずで、その意義を検証し、今後の施策を考えるべきだと指摘した。

東西診療所の廃止・統合について

 (2)について京都市側より、3診療所は築30年で老朽化し、早晩建て替える必要があった。京都府医師会が二条駅前に新会館を建設することになり、急病診療所も設置する条件で進めてきた。小児科深夜帯開設はじめ、統合による機能強化や利便性向上の面もある。確かに東診療所は山科区から二条駅なので、距離的に近くない。しかし、利用実態は山科・醍醐地域の民間病院が07年度2万1402人と、多くの患者さんを時間外に受け入れており、東診療所の同年度1635人より多い。

 これに対し協会は、求められるのは確実なアクセスの確保であり、それを公的に保障すべきだと指摘。京都市が東西診療所周辺の地域の医療機関を民間活力として活用したいなら、例えば当該医療機関を市として公式に指定医療機関のように位置づけ、公費も投入して運営する等の方策も検討できるはず。救急は広域行政で済まされない。1分1秒を争うものであり、地域密着での提供体制整備が、本来は望まれると指摘した。

近隣住民への説明の有無について

 (3)について京都市側より、近隣住民への個別説明はしていない。市会では何度も説明してきた。市として東西診療所は地域密着の診療所と理解しておらず、たまたま全市対象の診療所が3カ所に分かれているとの認識だ。統計でも、東西ともに右京や山科在住受診者は約半分である。近隣の人にとって、診療所がなくなることが喜ばしいはずはないが、全市的な観点から、医師確保も含め、1カ所に統合する必要性があると考えた。

 これに対し協会は、議員に説明すれば市民に説明したことになるとは思えない。議員のみに市民への説明責任があるのか。当局には当局の説明責任があると指摘した。

新急病診療所の運営体制について

 (4)について京都市側から、新たな京都市急病診療所の運営のあり方について、京都市は事業主体として大枠は京都府医師会と契約を結び進めていくと説明し、その上で、事業は京都府医師会に委託するのであり、運営体制のあり方等は基本的に医師会に検討していただく。京都市が指図する立場にはない。市もオブザーバーにと考えているが、正式に医師会に提案した段階ではない。

 これに対し協会は、医療専門職の判断によるべきものは京都府医師会に委ねるのは当たり前だ。しかし、市が事業主体として公費投入する公的医療機関であるならば、財政的関与に止まらず、市として診療所運営方針を確立することや、運営にあたり市民参加も保障するのは当然だと指摘した。加えて、現行の財団法人による運営が多くの医療団体の参加で担ってきた良い面が、引き継がれるべきだと重ねて要望した。

 最後には、協会から、京都市がかつて「京都市保健医療計画」を策定し、救急医療も含め、京都市民に対する保健・医療施策全体を網羅した方針を確立して行政を進めていた事実に触れた。それに比して今の京都市は総合的な計画を持たず施策変更を進めているのではないかと憂慮を表明。

 今後、展開される地域包括ケア構築等への対応をどのように考えているのか等についても意見を述べ、今後も引き続き、協会とも協議の場を作ることを要望し、懇談を終えた。

京都市の担当部局と懇談する関理事長ら
京都市の担当部局と懇談する関理事長ら

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