後発医薬品普及について考える
2010年度診療報酬改定と抱き合わせで、またぞろ「療養担当規則」の改正が答申され、これでもかと後発医薬品促進の手が打たれた。医院に対しては“後発品への変更不可”の手続きがより煩雑となり“できない”ように、他方調剤薬局に対しては“勝手に変更しやすい”ように仕向ける内容である。更にアメとしては処方率を上げれば加算される仕組みが増枠・増額された。まさに“後発品を処方しない医者が悪い”と言わんばかりの貶めと懐柔の施策である。
この政策の最大の問題は、後発品の品質の良悪、情報提供力の弱さ、万が一薬害が起こった場合の対応、納品遅延の問題など現場の不信・不安を不問に付したまま“とにかく医療費を引き下げる”国家目標だけで後発品普及を乱暴に推し進めていることである。医療者は盲目的促進ではなくて、今ある不信・不安を解消する環境整備(体制の確立や情報公開)を求めているのであり、有効性・安全性に全く問題がない後発品であれば、使用にやぶさかでない。
再評価などで劣悪な後発品はほとんどなくなった。その上でなお疑念が残るのは、“同等とみなす”ことをもって“同一と言い張る”胡散臭さである。不純物試験では先発品も含めて混入率0・1%以下と規定されているが、精製純度は各企業の能力による。0・09%の不純物が混入していても“同一”であるが、この含量はアレルギー反応等を引き起こし得る量で、結局不純物の多寡が後発品の品質決定要因の一つになっている。
また、生物学的同等性には溶出試験が行われ、ごく大雑把に言って2群各10人での血中濃度の平均値が正規分布の90%の範囲で重なっておれば“同一”とされる統計学的マジックである。さらに、添加物については表記義務はあるが、使用規制はない。個々の物質としての無害性は確認されているが、相互作用等は全く未試験で不明である。
後発品の承認過程における現行以上の試験が不可能なのであれば、せめて市販後調査やモニター・通報制度が必要である。更に万が一、有害事象が発生した場合の公的責任・救済体制確立こそ同時に進められるべき政策である。
(中西・T生)