後期高齢者医療制度2年目に 見直し検討会が最終報告
後期高齢者医療制度が、4月から2年目に入った。国会では、廃止法案が参院で6月に可決したが、衆院ではほとんど審議されないままである。
舛添要一厚労相は昨秋、私案を公表するとともに、「高齢者医療制度に関する検討会」を立ち上げたが、検討会は3月17日に最終報告「議論の整理」を取りまとめて議論を終えた。
報告は、「後期高齢者」「終末期相談支援料」の名称見直しを提言したが、年齢区分や運営主体など主要項目については、複数案を併記するにとどまっている。年齢区分については、(1)年齢で区分せず、全年齢で財政調整、(2)65歳で区分し、前期高齢者の財政調整を後期高齢者に拡大、(3)後期高齢者医療制度の対象を65歳以上に拡大、(4)75歳以上の被用者保険本人は被用者保険に残す、(5)一元化―を挙げている。運営主体については、舛添私案である国保の都道府県単位化と後期高齢者医療制度の一体的運営や、国保そのものの運営主体の検討にふれている。
一方、与党の高齢者医療制度に関するプロジェクトチームは4月3日、「基本的な考え方」を取りまとめたが、保険料軽減の経過措置の継続など、総選挙を意識した内容といえよう。
今後、制度見直しの議論は社会保障審議会医療部会に引き継がれるとみられるが、引き続き注視していく必要がある。
参考書籍の紹介
国民の関心を反映してこの間、多数の関連書籍が刊行されている。あらためて後期高齢者医療制度とは何かを知る上で、外せない2冊を紹介しておきたい。
一冊は、伊藤周平・鹿児島大学法科大学院教授による『後期高齢者医療制度』。同制度の歴史的背景から構造的問題まで分かりやすく解明している。この中で、本紙で指摘した「医療費キャップ制」の引用も記していただいている。
もう一冊は、この4月に日経新聞から出た『10年後、あなたは病気になると家を失う』。4人の共著で、後期高齢者医療の章は本会理事の津田光夫氏が担当している。同書は今、医療分野で起きている問題を解説し、表題のようにならないようにするには、どうすればよいかを提言している。
『後期高齢者医療制度―高齢者からはじまる社会保障の崩壊』(平凡社新書)伊藤周平著798円(税込)08年10月
『10年後、あなたは病気になると家を失う―国民皆保険崩壊の真実―』(日本経済新聞出版社)津田光夫、馬場淳、三浦清春、寺尾正之著1785円(税込)09年4月/協会会員割引 1,500円にて取扱 (送料別)