後期高齢者医療、廃止先送り含む5案/厚労省、民主に提示
後期高齢者医療制度の見直しについて、厚生労働省が民主党側に、2010年の高齢者医療制度改革会議の取りまとめ内容も含めた5つの案を提示していたことが分かった。2つの案は後期高齢者医療制度を廃止、3つの案は廃止を事実上先送りする方向性を示している。
民主党の厚生労働部門会議幹部は改革会議の結論に沿って廃止を目指すべきとの姿勢で、厚労省が5つの案を提示したことに不快感を示している。小宮山洋子厚生労働相は11月4日の会見で、5つの案について「厚労省として示したというレベルの話ではなくて、(関係者の)要求に従って議論の材料としてお渡ししたものという位置付け」と述べた。厚労省幹部は「まだ何も決まっていない。民主党厚労部門会議の医療・介護ワーキングチームで議論してもらうことになるだろう」と話している。
民主党はマニフェストで後期高齢者医療制度の廃止を掲げ、13年度から新たな高齢者医療制度を発足させる方針を示してきた。廃止後の新制度を議論した厚労省の高齢者医療制度改革会議は10年12月、最終取りまとめを発表している。
厚労省が今回提示した5つの案は以下の通り。
【案1=改革会議の最終取りまとめ】都道府県や市町村を財政支援した上で、75歳以上は都道府県が財政運営する国保、または被用者保険に加入
【案2】都道府県や市町村を財政支援した上で、75歳以上は市町村が財政運営する国保(市町村は任意で広域連合設立)、または被用者保険に加入
【案3】都道府県が広域連合に加入するとともに、被保険者証などに記された制度の名称を変更(例えば「A県高齢者医療」)
【案4】75歳未満と(75歳以上で)被保険者証を共通化
【案5】廃止の準備段階として市町村国保の財政基盤を強化
75歳以上の高齢者は、案1・2では国保か被用者保険に加入する。案3・4・5では「独立型の高齢者医療制度」に当面加入すると厚労省は説明している。後者の場合、現在の後期高齢者医療制度の基本的枠組みは解体されない。
●後期高齢者医療廃止の場合は1兆円超/厚労省試算
厚労省は当面要する公費を次のように試算している。
【案1・2】市町村国保の赤字解消に最低5000億円+α、高齢者医療分として都道府県と市町村が要求する国費4000億円程度+α、廃止に伴うシステム改修経費2000億−3000億円
【案3】名称変更に伴うシステム改修経費100億円程度
【案4】被保険者証の様式変更のみでも、システム改修など多額の経費がかかる見込み
【案5】市町村国保の財政基盤強化に2200億円
厚労省は案5の2200億円について、社会保障・税一体改革に絡んで「確保済み」との認識だ。(11/8MEDIFAXより)