府内病院の標榜・週診療日数を調査  PDF

府内病院の標榜・週診療日数を調査

入院中の他医療機関受診の規制は非現実的

 入院中に他医療機関を受診することは、診療報酬点数表上制限されている。入院中の患者を他医療機関に受診させた場合、たとえ専門外といった理由であっても、入院料が減算されたり、入院中の患者を外来で診た場合に、レセプト請求が認められない点数があったりするからだ。外来側医療機関がレセプト請求できない点数については、入院側医療機関と合議で精算するという方法も厚生労働省から示されているが、これは、レセプト請求については、1人の患者につき1医療機関からしか認められないという考え方につながりかねない。結果として患者のフリーアクセスを制限することとなるのが、非常に危惧される。

 また、現実として、入院医療機関の規模が小さくなればなるほど、専門が特化すればするほど、自院ですべての医療を完結できるとは限らない患者が発生し得ることから、他医療機関受診を規制することが、これら入院医療機関にとっての死活問題となりかねない。

 協会は、2010年診療報酬改定で入院中の他医療機関受診規制が強化されて以降、一貫して根本的改善の必要性を訴えてきた。今回、他医療機関受診の現実的な必要性を明らかにするために、京都府内全病院における眼科等の標榜状況、外来診療状況について、医療法に基づく医療機能情報(京都よろずネット)の掲載データを基に調べた(13年4月16日現在)。

 調べたのは、府内全171病院における(1)眼科、(2)耳鼻咽喉科、(3)皮膚科・皮膚泌尿器科、(4)精神科・神経科・心療内科の各標榜科(以下「4科目」)の標榜状況と、それぞれの週外来診療日数。標榜はしていても、医師が常勤か非常勤か等により当該診療科の対応可能な状況が異なるため、週当たり外来診療日数を調査の対象にした。

 眼科は、104病院、全体の61%で標榜がなかった。週5日以上外来診療を行っている病院は、44病院、26%であった(図1)

図1

 耳鼻咽喉科は、119病院、全体の70%で標榜がなかった。週5日以上外来診療を行っている病院は、33病院、19%であった(図2)

図2

 皮膚科または皮膚泌尿器科は、79病院、全体の46%で標榜がなかった。週5日以上外来診療を行っている病院は、37病院、22%であった(図3)

図3

 精神科、神経科または心療内科は、120病院、全体の70%で標榜がなかった。週5日以上外来診療を行っている病院も31病院18%と少なかった(図4)

図4

 4科目すべて週5日以上の外来診療を行っている病院は、わずか9病院、全体の5%しかなかった(図5)が、4科目、週1日でも外来診療を行っている病院でも、18病院、11%というわずかな数であった(図6)。これらの病院以外では、入院中の患者が当該4科目への受診が必要となった場合、転院、対診または他医療機関受診が必要という事態が発生することになる。

図5

図6

 また、4科目のうち1科目も週1日以上の外来診療がない病院が、56病院、全体の33%にのぼり、転院、対診または他医療機関受診が必要となる患者がさらに発生しやすくなる(図7)

図7

 今回の調査は、眼科等4科目に絞って調査を行ったが、限られた4科目においてでもすべての病院で診療を完結できる状態にないことは明白であった。治療や診療が必要な患者が発生する限り、自院で対応できない場合には、入院中であっても他医療機関受診等は必要となる。診療報酬点数表上、受診をいくら規制しても、疾病の発生を防止することには全くつながらず、受診を抑止することでむしろ患者の病態を悪化させかねない。入院中の他医療機関受診は制度上全面的に認められるべきである。

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