府の中期的な医療費推移見通し案に意見
中間案は国に一線画した対応 引き続き医療保障中心の政策展開を求む
京都府は国の「都道府県医療費適正化計画」に対し、都道府県が医療費を管理するという国の方針に慎重な姿勢を見せ、第二期「中期的な医療費の推移に関する見通し」(中間案)として策定している。この見通しでは、府民の保健医療水準の向上が行政の目的であるとし、国のすすめる都道府県単位の医療費管理政策に対し、一線を画した対応を行っている。協会は府のこうした姿勢を評価し、4月4日から5月2日にかけて行われたパブリックコメントに垣田副理事長名で、左記の意見書を提出した。(府中間案はメディペーパー京都4月号の資料編に既掲載)
〈中間案〉に対する私たちの意見
社会保障・税一体改革による医療・介護サービス提供体制改革は、それ自体が医療費抑制を目的としている。急性期医療への資源集中、病床機能分化と一体的に病床削減や平均在院日数短縮が進められる。
入院期間短縮の受け皿づくりとして、在宅医療の強化・地域包括ケアシステム構築を進めるという方向は、今回、第2期都道府県医療費適正化計画を策定させるために国が示した通知や医療費推計ツールにも、そのまま反映されていた。このことは、国が都道府県を、提供体制改革の推進者として主軸に据えようとしていることを明確に表したものと考える。
社会保障制度改革国民会議において、「各都道府県が2次医療圏ごとに基準病床数を高度急性期・一般急性期・亜急性期といった新たな医療機能別に算定し(国が標準を示しつつ、地域の実情に応じて都道府県が補正を行う)、地域医療計画に盛り込むべき」「医療計画の策定者である都道府県を国保の保険者とする」といった議論がなされ、都道府県単位の医療費管理路線は一層の展開が目指されようとしている。
国の姿勢が医療費削減に重きを置いた政策展開を明確にしている中、京都府においては「府民の保健医療水準の向上」が行政の目的であるとし、国のすすめる都道府県単位の医療費管理政策に対し、一線を画した対応を行っていることに注目している。
今回、府が公表した第二期「中期的な医療費の推移に関する見通し」(中間案)では、(1)計画名称に「医療費適正化計画」の文言を用いていないこと、(2)平均在院日数の短縮と後発医薬品使用促進について、数値目標を設定していないこと、(3)医療費推計(2017年)にあたっての平均在院日数短縮見通しに関し、国が準備した推計方法(病床数を減少させることで平均在院日数を短縮する考え方で設計されている)を用いなかったこと等、評価したい。
私たち医療者は患者さんの健康な暮らし、命を支えたい思いで日々の医療を行っている。医療費適正化のために医療のあり方を変えるという考え方に、到底馴染めるものではない。
例えば、府が数値目標化を見送った後発医薬品使用促進についても、医療費抑制効果があるからといって無条件に同意できるものではない。弊会が会員対象に実施したアンケートでも、後発品に変更したことで不具合が生じた具体的な事例は複数寄せられているし、専門医会の議論でも安全性への疑問が度々取り上げられている。後発医薬品に対する信頼性が全面的に確立しているとは言い難いのが現状である。品質にバラツキがあり、客観的に効能や安全性が担保できない後発品が存在する限り、処方権を持ち、患者さんの生命を預かる医師として、医療費抑制のために行政が後発医薬品促進を数値目標化するなどということは、看過できることではない。
同様に、患者さんの医療を受ける権利を狭めることにつながる病床削減や平均在院日数短縮を機械的に目標化する等、もっての他と考える。国の方針に対して、まとめられた中間案は、京都府の政策(考え)を発しているものと受け止め、姿勢を評価したい。
国は今後も都道府県をはじめとした地方自治体と医療政策の関係に、様々な提起を行ってくることが予想される。このような状況にあって、京都府が引き続き、患者さんの医療保障を第一義とした政策を展開していかれることを、強く望みたい。
2013年5月2日
京都府保険医協会
副理事長・垣田 さち子