広島・長崎、ビキニ、福島から学ぶ 被ばくと平和を考えるフォーラム開く  PDF

広島・長崎、ビキニ、福島から学ぶ 被ばくと平和を考えるフォーラム開く

 「被ばくと平和を考えるフォーラム/山下正寿さんと種まきうさぎ」が、ひとまち交流館(京都市下京区)で開催された。参加者は80人。フォーラムは、広島・長崎への原爆投下(1945年)から71年、ビキニ水爆実験(1954年)から62年、福島第一原発事故(2011年)から5年が経過した今日、「被ばく」を共通項と捉え、国が「被ばく」をどのように扱ってきたかを検証し、日本と世界の将来を市民が考える場として企画された。

 フォーラムは協会も参加した11団体共同の実行委員会形式で主催。賛同団体には、京都YMCA、京都YWCA、きょうされん京都支部等の8団体が名を連ねた。

 当日は3部構成で進行。第1部はドキュメンタリー「種まきうさぎ」(森康行監督)を上映した。映画は11年の東日本大震災・福島第一原子力発電所の状況を知ってもらおうと活動する、福島県の高校生たちの朗読グループ「種まきうさぎ」のメンバーの姿を追う。彼らは広島の高校生、高知県の高校生、汚染水に苦しむ福島の漁師たち、土地を奪われた農業従事者やアメリカの核実験で60年以上も苦しめられているマーシャル諸島の人々らと交流、明日への「平和の種」を撒く。旧ソ連の核実験場だったカザフスタンの高校生も登場する。

山下氏がビキニの実相を告発

 第2部は太平洋核被災支援センター事務局長の山下正寿氏が講演。山下氏は、高知県の高校教諭として1985年から、高校生とともにビキニ水爆被災船員の調査を30年以上続けてきた。山下氏は、福島原発事故の政府対応やマスコミ報道を見て、「ビキニ事件に似ている」と直感。「消されようとしたビキニ事件の実相を知らせることが、福島原発事故のこれからに立ち向かう道筋を示す」と語る。山下氏らの活動で厚生労働省はそれまで隠蔽し続けてきた「ビキニ被災船資料」を14年にようやく開示。しかし、国は「今回見つかった船舶(延べ556隻・実数473隻)の放射能の検知結果は、ICRPの放射線量の国際基準を大幅に下回っている」としており、被災者を再び切り捨てることが懸念される。山下氏らは被災船員の労災申請にとどまらず、国家賠償請求も準備中という。山下氏は「ビキニ事件を福島原発事故のこれからに活かすために」として、長期化する「フクシマ」に寄り添い、全国各地との学習・交流ネットワークを築き上げることが、やがて日本を変革する力となると訴えた。

 第3部は日本科学者会議京都支部代表幹事であり、京都工芸繊維大学名誉教授の宗川吉汪氏が「福島原発事故と小児甲状腺がん」と題して報告。福島の県民健康調査結果の統計学的分析から、「福島原発事故は小児甲状腺がんの多発とは無関係である」という仮説は有意水準1%で棄却される。今後、小児甲状腺がん発症の解明は「原発事故が原因である」という前提で行わなければならないと報告した。

 参加者からは「高校生たちが各地で活動していることに希望」「資料の隠蔽こわい。戦時中と一緒で政府が国民の人権を、どれだけ無視して不利益にしているか」等の声が寄せられた。

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