広場/ウズラ農家の苦悩やいかに
愛知県豊橋市で高病原性鳥インフルエンザが発生し、同じ農場で飼育されていたウズラ27万羽が処分された。ウイルスの型はH7N6で、これまでに感染によるウズラの大量死は確認されていないという。その後半径5km以内の農場の全ての家禽のウイルス検査を行い、新たにH7N6が発見された別のウズラ農場においても全てのウズラが処分される予定だという。
高病原性鳥インフルエンザが人に感染し、新型インフルエンザとなって猛威を振るう可能性のあることは、ここ数年の教育講演やマスコミ報道、さらには国の指針などで十分わかっているつもりである。しかし今回のウズラ大量処分という強硬手段を聞いて、もっと合理的な解決方法がなかったのだろうかと少し心が痛む。
今回のウイルスによる直接のウズラ被害は大きくなく、弱毒性であると報道されている。現に隣接する地域でウイルス抗体陽性、ウイルス抗原陰性のウズラがいたことが明らかになっている。つまり過去に感染して治癒したウズラが存在することは、今回感染したウズラもやがては自然治癒する可能性が大いにあることを示唆している。鳥インフルエンザは鳥にとってはあくまで風邪の一種であり、これまでも小規模な流行は繰り返しあったと思われる。何とかうまく隔離をして、人との接触を最小限に留め、感染が小康状態になるのを待つことができなかったものか。
渦中のウズラ農家は一部始終を行政の指導に任せるしかないのであろうが、自分のところのウズラが大量に処分され、当分ウズラと卵の移動を制限され、これからの風評被害の影響も計り知れず、眠れぬ夜が続いていることだろう。今回の措置は家畜伝染病予防法にのっとったものらしいが、今後国民の新型インフルエンザに対する備えが浸透するにつれて、同様のケースが増えるであろう。しかし人と家畜との関わりは有史以前から脈々と受け継がれてきたものである。そしてウズラも大切な資源である。いくら人の安全が優先されるとはいえ、何か釈然としない。最近、人の「利己的な遺伝子」の働きが強くなったのだろうか。
(伏見・古家 敬三)