年金型生保の二重課税問題について  PDF

年金型生保の二重課税問題について

 遺族が受給する年金型生命保険金のうち、相続税の課税対象となった部分について、所得税の課税対象とならないとする最高裁判決が2010年7月に出た。

 これにより今後、取り扱いを変更し、平成17年分から平成21年分の5年分について、所得税を納め過ぎた方に還付する方向を国税庁が10月1日発表した。

 保険医年金も対象となるため、財務省・国税庁からの通知の概略をお知らせする。なお、生命保険会社は財務省・国税庁からのガイドラインの提示を受けた後に具体的な作業に入るため、該当者個々へのご案内は今しばらくお待ちいただきたい。

相続または贈与等に係る生命保険契約等に基づく年金の税務上の取り扱いについて

2010年10月1日 財務省・国税庁の通知より

1、対象年分

 平成17年分〜平成21年分

 平成16年分以前は特別な還付措置

2、対象となる納税者

 相続、贈与等により取得した生命保険契約や損害保険契約に係る年金を受給している方で、所得税が源泉徴収されている方

3、対象となる保険契約等

 生命保険会社、旧簡易保険、損害保険会社、JA共済、全労済での取扱となる年金で

 (1)年金形式で受給している死亡保険金

 (2)学資保険の保険契約者が死亡したことに伴い受給する養育年金

 (3)個人年金保険契約に基づく年金

4、税務上の取り扱いの変更

 各年の「保険年金」を所得税の課税部分と非課税部分に振り分け、課税部分の所得金額(課税部分の年金収入額―課税部分の支払保険料)にのみ所得税を課税。

 「保険年金」を支給の初年は全額非課税で、2年目以降、非課税部分が徐々に減少していく簡易な計算方法により所得税非課税部分を算定していく。

 支給開始年から終了年に向けて、非課税部分は段階的に減少していくことになる。

5、法令改正の手順

 10月下旬に所得税法施行令を改正するとともに、法令解釈通達を発遣し、取り扱いを変更。

 取扱変更後、所得税の還付の手続きが可能。

6、対象となる納税者への案内

 取扱変更後、生命保険会社等から、国税庁作成のパンフレットと併せて還付手続きに必要となる年金情報等が個別に通知される予定。

7、対象となる納税者の還付手続き

 所得税を納め過ぎとなっている場合、「更生の請求」か「確定申告(還付申告)」

8、対象とならない納税者

 各年の所得税の申告状況等により、既に保険年金に係る源泉徴収税の全額が還付されている納税者

9、所得税の還付手続きの期限

 (1)更生の請求(対象となる年分の所得について、既に確定申告している方)

 ※取扱いの変更を知った日の翌日から2カ月以内に行う。

 →「取扱いの変更を知った日」とは、納税者が取扱いの変更を実際に知った日

 ※税務署が減額更正できる期間は、原則として申告書が提出された日から5年間

 (2)確定申告(還付申告)(対象となる年分の所得について確定申告をしていない方)

 ※申告する年分の翌年1月1日から5年を経過する日まで

10、還付額の計算方法

 (1)各年の保険年金の金額を課税部分と非課税部分に振り分ける。

   ↓

 (2)各年の保険年金の課税部分に係る所得(課税部分の年金収入額 課税部分の支払保険料)を納税者の他の所得と合算して、取扱い変更後の所得税額を算出。

   ↓

 (3)取扱い変更前の納付済み所得税額から取扱い変更後の所得税額を差し引いて還付額を算出。(図参照)

(参考)保険年金の課税・非課税部分の振り分け
(参考)保険年金の課税・非課税部分の振り分け
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11、平成16年分以前の「保険年金」に係る所得税の還付

 所得税の還付請求権が消滅している平成16年分以前の納税分についても、救済措置をとる。

 ただし、税務署における確定申告書等の保存期間や民法の債権の消滅時効の期間等を踏まえ、平成12年分以降平成16年分以前の「保険年金」に係る所得税について特別な還付措置をとる方向で検討。

 過去5年を超えて救済する特別な還付措置の内容(還付金額の算定方法等)については、税制調査会での議論を経て、年末に結論を得る方針。

12、還付手続きに当たってのサポート体制

 (1)電話相談:税務署に専用窓口を設け、職員が対応

 (2)税務署窓口相談:事前予約制により相談に対応

 (3)国税庁ホームページ:還付の対象となるか否かを簡単に判定できるフローチャートやQ&Aなどのパンフレット、還付手続きの詳細な説明や手続きに必要な各種様式のほか、納税者の方ご自身が自宅で簡単に還付額の計算をすることができるよう、年金所得の計算のための簡易ソフトを掲載

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