常識と工夫69
安楽死における刑事罰免責の条件と尊厳死
いわゆる東海大学安楽死事件に関して、1995年3月28日の判決の中で、安楽死における刑事罰免責の4条件が提示されました。以下にその条件の要旨を挙げます。
1. 患者の激しい肉体的苦痛、2. 死の不可避性と死期の切迫、3. 他の代替手術の不存在、4. 患者の明らかな意思表示。
上記のように比較的分かりやすく提示されたにも関わらず、安楽死事件は後を絶たないのが現状です。しかも報道される安楽死事件の多くは、これら4条件を満たしていなかったのでは? との疑問を投げかけられることが少なくありません。安楽死問題が刑事事件となると警察が関与するため、協会としても詳細な調査が困難となります。
しかしながら、限られた情報の中から、安楽死事件の渦中にいる医師に関する報道を見ていると、安楽死を「尊厳死」と混同されていたのではないかと思われるふしもあります。
安楽死や尊厳死の定義・解釈は思った以上に複雑で、一言で説明することは困難ですが、参考までに日本尊厳死協会の説明を引用します。
「安楽死は、助かる見込みがないのに、耐え難い苦痛から逃れることもできない患者の自発的要請にこたえて、医師が積極的な医療行為で患者を早く死なせることです」
「尊厳死とは、傷病により『不治かつ末期』になったときに、自分の意思で、死にゆく過程を引き延ばすだけに過ぎない延命措置をやめてもらい、人間としての尊厳を保ちながら死を迎えることです」
協会では、すでに京都保険医新聞資料版で1998年1月26日に「医療事故と刑事問題」、さらに1998年6月29日に「告知・尊厳死・安楽死についての意識・実態調査」について、情報提供しています。こちらの方もぜひ、参考いただければ有効かと思います。
次回は、レセプトとカルテの開示についてお話しします。