常識と工夫 66  PDF

常識と工夫 66

「今回は勉強になりました」って誰のために言ってるの?

 医事紛争が発生して、それが解決すると、医療機関側がホッとするのは当然のことです。解決に至るまでの、医療機関側の並々ならぬ努力と労力は、十分に理解できます。しかしながら、その際に油断が生じることもあるようです。

 医師や医療従事者は、発生した医事紛争あるいは事故の問題点を把握して、反省を促されることもあるでしょう。これは、医療過誤の有無によりません。そこで、「今回は大変勉強になりました。今後、同じことが起こらないように努力していきます」と、患者さんに報告されることもあるようです。医療機関側としては精一杯の反省の弁、できる限りの誠意を示したつもりなのですが、一部の患者さんは「勉強になったって、私はモルモットだったのか?」と、気分を害される方もいるようです。患者さんからこのように質されて、医療機関側は正直いって驚いたそうです。

 紛争に遭遇した患者さんに対して、何も必要以上に特別扱いして下さいとはいいませんが、患者さんに対する発言は、あくまで患者さん本位になっていただきたいと思います。上記のように発言した医療機関側に、何の悪意もないことはよく分かるのですが、「勉強になった」というのは、あくまで医療機関側の立場からのものです。ここは、もっと直接的に「反省している」と伝えた方が、より誠意が伝わりやすいと思いますが、いかがでしょうか。もちろん、再発しないように心がけることを伝えるのは問題ないでしょう。紛争に遭遇した患者さんは、通常以上に神経が過敏になっている場合もあるかもしれません。そういった患者心理を推しはかるのも、医療従事者としての技量と考えられます。

 次回は、患者さんへの返答の仕方について考えてみます。

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