市リハ行政の答申に対し声明発表 リハセン縮小は深刻な後退
京都市社会福祉審議会(委員長・森洋一京都府医師会長)は、京都市身体障害者リハビリテーションセンター(以下、市リハセン)の附属病院・補装具製作施設の廃止方向を盛り込んだ答申を門川大作京都市長に提出(本紙第2863号既報)。協会はこれを受け7月17日、垣田さち子理事長の声明を発表した。声明は、京都市が答申を市方針にせず、市リハセン附属病院廃止に向けたあらゆる作業の中止、行き場をなくす患者さんの受け皿や附属病院なき後のリハビリテーションの質の担保についての解決策を全市民に明らかにせよと求めた(下記に声明全文)。
審議会答申を受けた京都市は、「京都市におけるリハビリテーション行政の基本方針(案)」と市民意見募集の開始を京都市会の教育福祉委員会に24日に報告。報告された方針(案)は、答申ではあいまいな表現だった「附属病院の廃止」を明記した。市民意見募集は8月23日(金)を期限に募集される。
協会は、現在協力を訴えている附属病院廃止方針撤回を求める会員署名と共に、今回の意見募集に応え、多くの会員各位が意見表明されることを呼びかけたい。同時に、他の専門職や市民団体と共に立ち上げた「京都のリハビリを考える会」としての市民署名にも取り組む予定。
リハセン附属病院の廃止を止めよ 声 明
一、 京都市は京都市社会福祉審議会答申(2013年7月9日)を市方針とせず、京都市身体障害者リハビリテーションセンター附属病院廃止に向けたあらゆる作業を中止すること
二、 京都市は私たちの指摘し続けている、附属病院廃止に伴い、?行き場をなくす患者の受け皿を誰が担うのか、?医療機能をなくしてリハビリテーションの質をどう担保するのかとの問題に対し、解決策を全市民の前に示すこと
2013年7月9日、京都市社会福祉審議会(委員長・森洋一京都府医師会長)は、「京都市におけるリハビリテーション行政の今後の在り方について〈答申〉」を、門川大作京都市長に提出した。
私たちは、本答申とりまとめを先導した京都市の意図が、リハビリテーション行政の充実ではなく、京都市身体障害者リハビリテーションセンター(以下、市リハセン)附属病院廃止等を通じ、市の公費支出抑制を図ることにあること。市リハセン附属病院廃止は、市の保健・医療行政に深刻な後退をもたらすと指摘してきた。
私たちは、京都市当局と社会福祉審議会委員長が、私たちの数次にわたる要請を一切顧みず、今回のとりまとめに至らしめたことに対し、強く抗議するとともに、医療者としての責任を感じる。
京都市がリハビリテーション黎明期の1978年に京都市身体障害者リハビリテーションセンターを開設したことは歴史的偉業だった。その後、徐々にリハビリテーションの必要性・重要性は共有されていったが、2000年代に入り、介護保険制度と障害者自立支援法の創設、診療報酬上の日数制限導入等により、リハビリテーション給付の制限・切捨てが行われるようになった。市リハセンは、こうした事態にあって制度から切り捨てられた人たちの受け皿となり、必要な医療を保障し、共に職業復帰・在宅復帰に取り組んできた。その仕事の価値は計りしれない。市リハセンは公的機関として、「民間活力」がなし得ない仕事をやっているのである。
答申は以下2点について、極めて不誠実だ。(1)附属病院を廃止すれば、今入院している人や、制度の狭間に落ち込む人を誰が受け止めるのか?の問題に対し、解決策がない。もし京都市が、「誰かがやってくれる」とか、リハビリテーションを受けられるかどうかは「自己責任の範疇だ」と考えているならば、「棄民」である。(2)答申は、センターが今後重点を置くべき機能として「総合相談窓口機能」、「地域リハビリテーション推進」、「高次脳機能障害者に特化した障害福祉サービス提供」を打ち出している。これらの機能が医療機能を喪失した市リハセンに果たせると本気で考えているのか。
京都市は市リハセン創設の志に立ち返り、公的サービスの意味を捉えなおしてほしい。社会保障とは公的に保障されるべきであり、自治体はその責を負い、公的施設はその提供を担う。その常識を踏まえれば、今答申の不誠実さは明確である。
2013年7月17日 京都府保険医協会 理事長 垣田さち子