市リハセン病院の廃止とリハビリ行政の後退を許さない  PDF

市リハセン病院の廃止とリハビリ行政の後退を許さない

 協会は、京都市が「京都市におけるリハビリテーション行政の基本方針(案)」を発表し、京都市身体障害者リハビリテーションセンター(以下、市リハセン)附属病院を廃院とする方針を受け、京都市長に「市リハセン附属病院を廃止せず、公的なリハビリテーション保障を強化するよう求める要請書」を提出し、市リハセンの存続と、京都市民のためのリハビリテーション(リハビリ)保障を一層強化することを求めた。

 市リハセンは、リハビリ医療が世間ではまだ認知度の低かった1978年に設立された全国的にも歴史ある施設である。その後に、リハビリの重要性が共有されて多くの施設が生まれた。しかし、現在のリハビリを取り巻く医療・福祉情勢は大きく変化し、介護保険制度と障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)の創設、診療報酬制度における日数制限の導入によりリハビリの給付制限が行われ、さらにリハビリを必要とする患者の切り捨てから、いわゆる「リハビリ棄民」を生んだ。

 市リハセン附属病院は、多数の症例を扱ってきた経験ある施設である。特にリハビリ疾患のなかでも、ゆっくり時間をかけ、豊かな治療経験を必要とされる複雑障害である高次脳機能障害および頸椎損傷症の患者には、公的施設でのリハビリ訓練が障害回復に望ましいと考える。市リハセン附属病院は、医療技術と経験、人材と人員数等の面で、「民間活力」では成しがたいことを行ってきた。京都市は廃止後、「総合相談窓口」や「高次脳機能障害に特化した障害福祉サービス提供」等によりリハビリ行政を行うとのことだが、市リハセン附属病院の役割を他の医療機関が取って代わることは難しく、一度失われた制度を元に戻すことはできないことを認識すべきである。病院の廃止により障害者は行き場をなくす。特に高次脳機能障害や頸椎損傷のリハビリの質のレベルをどう維持するのかについては全く考慮されていない。京都市の公費支出抑制のみを考える政策は、福祉・医療行政の後退であり、日数制限が過ぎれば「自己責任の問題」とすることは不誠実である。

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