市リハセン・児福センター・こころセンター 京都市3施設合築方針の真意質す  PDF

市リハセン・児福センター・こころセンター 京都市3施設合築方針の真意質す
 
京都市当局と懇談
 
 協会も参加する「京都市3施設合築方針を考える実行委員会」は8月10日、初の市当局との懇談会を、京都市地域リハビリテーション推進センター(市リハセン)で開催した。懇談は「京都市の三つの公立施設(京都市地域リハビリテーション推進センター・京都市児童福祉センター・京都市こころの健康増進センター)『合築方針』に関する第1次質問・要望書」に基づき行った。出席したのは、京都市から障害保健福祉推進室室長の斉藤泰樹氏、同担当課長の中田景子氏。実行委員会からは、協会の垣田理事長、渡邉副理事長はじめ、京都障害児者の生活と権利を守る連絡会やこどもたちの保育・療育をよくする会、きょうされん京都支部、京都社会保障推進協議会、京都市職員労働組合のメンバーら10人。
 
具体的構想ないままの3施設合築方針
 
 要望書は、同実行委員会の共同代表者名(こどもたちの保育・療育をよくする会代表・桝山延子、きょうされん京都支部代表・粟津浩一、京都のリハビリを考える会代表・垣田さち子)で提出し、次の2点の主旨で要請した。(1)京都市3施設の合築方針は京都市の正式な方針か。どのような手続きで京都市民の了承を得たのか。(2)A合築後の3施設の機能・役割等の構想はどのようなものか。具体的な構想がない場合、3施設合築に関する手続きを停止せよ。
 
 これに対し当局は、(1)について、市リハセン、児童福祉センター、こころの健康増進センターを、現在こころの健康増進センターならびに京都市衛生環境研究所がある土地に合築する方向は京都市の正式な方針だと述べた。市民の了承については、行政方針は必ずしも議会議決を必須としない。京都市方針として市会教育福祉委員会へは報告した。さらに、京都市社会福祉審議会の議を経てまとめた「京都市におけるリハビリテーション行政の基本方針」(2013年10月、注:市リハセン附属病院廃止方針を盛り込んだ市方針)で示した「3障害一体となった総合相談窓口の設置」との方針に基づくものと説明した。(2)については、合築に関する具体的内容は、関係課の課長級職員によるプロジェクトチームで検討しており、現時点で内容を示せる状況にない。しかし構想ができていないからといって、施策を中止せよとの要望には応えがたい、とした。
 
「合築方針に正当性なし」と厳しい声
 
 回答を受け、参加者から厳しい声が次々にあがった。
 
 実行委員会側からの、行政方針は議会議決を必ずしも必要せずというが、議決すべきか否か、社会福祉審議会で諮るか否か等の基準は何か、との問いに対し、当局は個々の議案の性格・位置づけによって検討するもので統一的な方針があるわけではないとした。これに対し実行委員会は「3障害一体となった総合相談窓口」とは何か。仮に、専門機関や行政機関につなぐための「総合受付」に過ぎないなら、施設ごと一カ所にまとめる理由にならない。さらにその文言が入っている「基本方針」に向けて議論した京都市社会福祉審議会(および「専門分科会」)では「施設を一つにする」方向が協議された事実はない。3施設合築の是非そのものが市民の同意を得ておらず、本来は正式に市民の意見を聴取し、市会審議を経るべき重要案件だと指摘した。
 
政策決定プロセスに批判続出
 
 京都市は、合築方針の意味について、身体障害者更生相談所(市リハセンに設置)、知的障害者更生相談所(児童福祉センターに設置)、こころの健康増進センターの相談機能それぞれについて、「障害者総合支援法」が3障害一体のサービス提供や障害の壁を超えた施策展開を求め、その拠点化を図る構想である。また、児童福祉(虐待事例等の相談所機能)施策についても、オーバーラップできる部分で充実させることができると考えていると説明。これに対しても疑問が噴出した。
 
 実行委員会は、「3障害一体の施設に、なぜ『子ども』がカテゴリーとして入るのか?」「児童福祉センターの発達相談へ子どもを連れてくる親御さんは、障害受容をしきれていない方も多い」と本質的な違和感を表明。これに対し市は、合築は、「障害者保健福祉施策の総合的な推進」と「児童福祉施策の充実・強化」に向けた取組方向であり、二つの方向性を踏まえた方針。児童福祉を障害福祉に落とし込むものではないとし、確かにナイーブな問題であり、それを無視して進めることは考えていないとも述べた。
 

 さらに、3施設はどれも伝統ある施設。方針を決めたなら、市職員の医師や専門職の意見を聴いて決めたのかとの問いに対して、市は専門職からの意見は、プロジェクトチーム参加の課長を通じ、聞き取りを進めると述べた。これに対し、実行委員会は「市の専門職の意見を聴くなら、3施設合築を打ち出す前にすべきだ。さらに、発達相談に子どもを連れて行く親御さんのメンタリティのことは、何よりも最初に聞き、施策に反映すべき性格の事柄だ。政策決定プロセスがおかしい」と強く批判した。 

ページの先頭へ