工藤翔二氏の講演概要
保険収載の学会要望取りまとめ─厚労省へ「提案」
内保連の基本的な仕事の一つは、診療報酬改定の学会提案の取りまとめである。これは要望でもなく要求でもなく、提案という形をとっている。改定年の12月(昨年は12月10日)に各学会からの提案を取りまとめる。ただ、それぞれが最重要項目として提案するので、そのままではどうにもならない。それを22ある領域別委員会で激論を戦わせて、領域別で順位づけを行う。
3月の第2次取りまとめを経て5〜6月にかけては、内保連役員が各学会にヒアリングを行う。これはそれぞれに違う役員自身の専門知識の整合性を図るという意味でも重要な作業となる。そして、例年6月10日締切で厚労省に提出する。
担当する領域は、特掲診療料のうち外保連が担当する範囲(処置、手術、麻酔)以外のすべて。基本診療料部分のみならず医学管理部分の提案まで厚労省から突き返されたこともあったが、初・再診料や入院基本料は内科的技術評価を考える上で外せない項目であり、現在は医学管理と併せて保険局医療課長手渡しで提案をしている。その後、7月に厚労省が連日にわたって直に学会ヒアリングを行う。これが一連のスケジュールということになるが、逆に言うとこの流れに乗らないと、まず要望を実現することはできないということになる。
ちなみに、2014年改定では、未収載技術140件、既収載技術225件の提案に対して、承認はそれぞれ31件、7件であった。過去を見てみても通るのは20%ぐらいである。
戦後70年来の課題─診断技術をいかに評価するか
もう一つの内保連の役割は、「内科系技術」評価の確立である。点数表が現在の形となった昭和33年の厚生白書に、「物と技術とが不可分の形をとっている診療報酬を物と技術の報酬に区分して考えることが必要であり、とくに技術料については、医師が長時間を費すもの、または高度の熟練を要するものほど高く評価することが必要」と書かれている。これを書いた方には敬意を表したいが、これが戦後から現在まで実現していない。内保連の基本的なスタンスは「物(薬剤、材料、診断・治療機器)から人(技術)へ」であり、戦後70年かかって実現していないことをやろうじゃないかというものである。
一つは、「診断」の技術評価の確立である。現在は、独立した評価はなく、評価されていないか、基本診療料に含まれると考えられるが、これを疾患別に難易度と経験年数によってAからE(+集学的診断要のF)にランク分けをする作業に、各学会で取り組み始めている。
また、内科治療上極めて労力を要する26(最終的には25)の重篤な急性疾患・病態の診療を「特定内科診療」として診療報酬体系の評価に組み込むことを目指し、『内保連グリーンブック』として2013年に公開した。当面はDPC㈼群・高度急性期病院機能評価への導入を目指している。
第二に、医療の高度化に伴って時間がかかるようになった「説明と同意」への評価。点数表の中には777件の「説明と同意」に関連する項目があるが、そのほとんどが算定要件に組み込まれていて、独立した評価はない。現在ワーキンググループで検討しており、疾患や内容に応じて必要な時間やマンパワーを調査する取り組みが始まっている。
第三に、現在外来の投薬でしか独立した評価のない「処方」技術を、入院・外来、投薬・注射を問わず確立することを求めている。
16年改定に向けては、一体改革が進む中、国民皆保険は守らなければならない立場であり、「物から人へ」の基本的スタンスは変わらない。これまで述べた評価の確立を求めるとともに、薬価引き下げ分の本体部分への充当を、どのようにして財務省から取り返すかも、私達の大きな課題である。