川からやってきたふくろう  PDF

川からやってきたふくろう

村井 歌(乙訓)

 昔、旅先の宿で聞いたその鳴声につよく惹かれ、ふくろうに関心を持つようになった。ふくろうは意外に人里近くに棲んでおり、人間に親しまれている鳥だと知った。そして人形化されたふくろうはその土地の風俗をとてもよく表していて面白い。空港の売店などでもよく見かけ、手ごろな軽さと価格でつい買ってしまい、いつの間にやらわが家には世界中からプチふくろうが集まった。

 私は一時期、高知に住んでいた。高知の川は大きく美しい。四万十川は西へ、四国三郎吉野川は東へ、そのまん中を仁淀川が南下して土佐湾へ入る。仁淀川の源は、四国を東西に走る四国山脈の最高峰石鎚山である。標高1982m、西日本の最高峰なのだ。その頂上は岩峰で、かけられた鎖を頼りに登らねばならない。

 谷川は美しい石を運んでくる。私は仁淀川の浅瀬や河原で色・形のよい小石を拾い、箸置にして楽しんだ。

 当時、1人の若い彫刻家がこの川石に魅せられて東京から移ってこられた。見事に石が刻まれて生まれ変わるさまを見、私はぜひ仁淀川の石でふくろうを彫ってほしいとその彫刻家に頼んだ。川に浸かり歩いての素材石さがしには苦労していただいた。1本の急流が烈しく本流へ流れ込むポイントでついに求める石が見つかった。石は引き揚げられ、アトリエへ運ばれ、ふくろうになっていった。

 身丈約30?、胴まわり約40?の黒っぽい石のふくろう。たたんだ羽部分は褐色がかり、細い傷痕がかえって羽根らしく見せる。まだあどけなさの残るまん丸い黒い瞳が少し身をよじって空を見上げている。作者のつけた作品名は「森へ帰りたい」と少し切ない。

 わが家のふくろうは高知の仁淀川から生まれた。高知の石は硬くて重い。けれども京都へふくろうを抱いて帰った。今もいつも私のそばにいてくれる。

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