小児科診療内容向上会レポート  PDF

ヒトメタニューモウイルス その構造から症状・診断検査まで

 小児科診療内容向上会が3月28日、京都小児科医会、京都府保険医協会、Meiji Seikaファルマ株式会社の共催で開催された。京都小児科医会理事の天満真二氏が「レセプト審査 最近の状況と留意点」について解説。特定医療法人とこはる東栄病院副院長、小児科医長の菊田英明氏より「呼吸器感染症の中のヒトメタニューモウイルス感染症—迅速hMPV抗原検査をどのように使用するか?—」について講演があった。

小児科診療内容向上会レポート

 最近、「ヒトメタニューモウイルス(以下hMPV)」という名をよく耳にします。今回の講演は、hMPV感染症について、ウイルス学、疫学、臨床像、治療、臨床検査法等について網羅された内容でした。以下に、その一部を報告します。
 2001年に発見されたhMPVは、ウイルス学的にRSウイルス(RSV)に近い。最近、ヒト体内に、両方のウイルスを中和する抗体を産生するBリンパ球が発見され、今後に治療の可能性もでてきたという点で興味深い。
 小児の呼吸器感染症の大部分はウイルスが原因で、小児は短い期間に複数のウイルスの重複感染をうける。ウイルスの不顕性感染が多くあり、感染源にもなっている。
 hMPVは、小児呼吸器感染症の5〜15%に検出される。疾患群ごとの検出ウイルス順位をみると、クループ症候群以外では、2〜5番目に多く検出されるウイルスである。また、成人でも2〜4%に検出され、感染力が非常に強いため、施設内高齢者での検出率が高い。
 臨床像は、全ての年令層で上気道炎から下気道炎まで起こすが、小児期では、多くが不顕性感染か上気道感染、いわゆる「風邪」である。高熱の持続と、喘鳴を伴い呼吸困難を起こす場合が問題となり「インフルエンザのような熱発と、RSV感染症のような呼吸器症状が一緒になった症状」と捉えると理解しやすい。高熱は、二次感染がなくても5日くらい続き、7日以上では、細菌の二次感染を考慮する。
 hMPV感染症をRSVと比較すると、流行時期は春3〜6月(RSVは10〜3月)。初感染の時期は遅く5歳までに75%(RSVは1歳までに70%)。重症例は乳児より幼児に多い(RSVは乳児が重症)。成人でも再感染を繰り返す(RSVは少ない)。臨床症状は区別できない。が、hMPVは高熱が1〜2日長く、RSVでは中耳炎が多い傾向にある。胸部の間質性肺炎は、片側性が多い(RSVは両側性)。
 イムノクロマト法によるhMPV抗原定性が、2014年1月1日から保険適用となり、日常診療での迅速検査が可能になった。重症例での診断が目的なので、「画像診断により肺炎が強く疑われる、6歳未満の患者」(外来、入院問わず)だけが保険適用である。感染予防は難しく、軽症例ではチェックの必要はない。ウイルス量の多い検体を採取するには、発症から1〜4日の早すぎない時期に、オリーブ管を使った鼻腔吸引液を使うとよい。
 明日からの臨床場面ですぐに役立てられる、有意義な講義でした。
(右京・菅野知子)

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