小児科診療内容向上会レポート
第36回小児科診療内容向上会を京都小児科医会、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、保険医協会の共催で4月2日開催、72人が参加した。京都小児科医会理事で社会保険診療報酬支払基金京都支部審査委員の木善郎氏が「保険点数の留意事項と最近の審査事情」を、京都大学大学院医学研究科皮膚科学准教授の椛島健治氏が「診療向上に結びつくアトピー性皮膚炎のメカニズムの最近の話題」を講演した。
アトピー性皮膚炎のメカニズム学ぶ
アトピー性皮膚炎は小児科医にとって治療に手を焼く疾患の一つだが、今回、椛島健治先生に皮膚科医の立場から最新の話題を講演いただいた。皮膚の機能や病態がアトピー性皮膚炎だけでなく気管支喘息を含めた他のアレルギー疾患の発症機序にも関与する可能性があると、大変示唆に富んだ内容であった。
小児科医は皮膚を症状の発現部位として捉え、その色調や皮疹を疾患診断の手がかりにしている。講演の初めに「皮膚は、生体の内外を隔てる人体最大の臓器である」と言われ、当たり前のことながら改めて「なるほどそんな捉え方があったのか」、と感心した。以下、講演の一部を紹介する。
「我々は細菌・ウイルス・カビなどの外敵や異物から皮膚免疫システムを介して自己を守っている。過剰な免疫応答はアトピー性皮膚炎をはじめとする『アレルギー』を引き起こす。最近、皮膚バリア機能を司るフィラグリン遺伝子の異常が20〜50%のアトピー性皮膚炎患者に認められたことが報告された。フィラグリンはケラチン線維を束ねるタンパクで、角層細胞の物理的に強固な形態形成に重要な役割を果たすとともに、分解されると天然保湿因子として作用し、角質水分保持やpHを弱酸性に保つという役割も果たし、皮膚バリア機能において重要な働きをしている。アトピー性皮膚炎のみならず、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、金属アレルギー、手湿疹の患者においてもフィラグリン遺伝子変異が健常人に比べ有意に高く認められることが報告されている。
アトピー性皮膚炎→気管支喘息→アレルギー性鼻炎と進むアレルギーマーチという考え方は80年代に提唱され、このような流れが存在することに異論はないが、その発症機序に関係するのは食物抗原の経口感作やダニやホコリなどの吸入抗原なのか? 皮膚バリアが破壊された状態では、経気道的ではなく、むしろ経皮的に曝露され感作が成立するのではないかという風にも考えることができる。今後は、フィラグリン遺伝子変異の早期診断やバリア機能回復を目指した治療をより早期に行うことがアレルギー全般の重要な予防となろう。」
講演の最後に、皮膚の組織像を3次元で示した大変美しいスライド等、多数見せていただいた。アトピー性皮膚炎の診断・治療では皮膚科医と小児科医の意見が異なることも多いが、互いの研究成果を学びあって明日の診療に役立てていきたい。(伏見・辻幸子)