小児下気道感染症の最近の現状と今後の課題  PDF

小児科診療内容向上会レポート

 第39回小児科診療内容向上会が京都小児科医会、京都府保険医協会、Meiji Seikaファルマ株式会社の共催で3月29日に開催された。京都小児科医会理事の辻幸子氏の司会で開会。京都小児科医会会長の吉岡博氏、京都府保険医協会副理事長の渡邉賢治氏のあいさつの後、京都小児科医会理事で京都府国民健康保険団体連合会国民健康保険診療報酬審査委員会委員の川勝秀一氏が「新点数の留意事項と最近の審査事情」を解説した。その後、新潟大学医歯学総合病院小児科助教の大石智洋氏が「小児下気道感染症の起炎菌について」と題した講演を行った。

小児下気道感染症の最近の現状と今後の課題

 ここ数年で小児期に接種するワクチンの種類が増加し、特に肺炎球菌やb型インフルエンザ菌(Hib)に対するワクチンが日本でも導入され、公費負担から定期接種化を経て接種率が上昇するとともに、小児期の感染症に変化が生じたと言われています。今回は、小児下気道感染症の起炎菌を中心に、肺炎球菌およびインフルエンザ菌、マイコプラズマを取り上げ、耐性菌の現況と、それを踏まえた経口抗菌薬による治療の考え方などについての講演でした。以下に、講演内容の一部を紹介します。

 「日本では、7価小児肺炎球菌結合型ワクチンが2010年2月から導入され、11年に公費負担、13年4月に定期接種となって接種率が向上するとともに、小児期の侵襲性肺炎球菌感染症は減少し、ワクチンの中に含まれる耐性を持つ菌の割合が高い血清型が減少し、その結果相対的に感受性が改善傾向にあると思われる。検出される肺炎球菌の血清型の分布では、年々ワクチンのカバー率は低下しつつあり、13年から13価ワクチンが導入された。一方インフルエンザ菌においては、肺炎球菌と同様にワクチンが導入され13年4月からは定期接種となったが、侵襲性感染症を起こす血清型であるHibにのみ効果を示すワクチンであり、日本ではインフルエンザ菌にHibの占める割合が低いため、肺炎球菌と異なりワクチンの普及による影響があまりないと考えられる。従って、今後、下気道感染症において、肺炎球菌が起炎菌の感染症が減少し薬剤感受性が改善する一方で、インフルエンザ菌が起炎菌の感染症の相対的増加が予測され、その治療が問題となっていく可能性がある」。

 続いてマイコプラズマに関し、近年マクロライド耐性が増加しているが、その耐性の機序とその現状の中での抗菌薬に対する考え方と、重症肺炎例に対するステロイド治療の話がありました。最後に、「肺炎球菌の耐性化は近年改善する一方、インフルエンザ菌の耐性化は進行し、マクロライド耐性を示すマイコプラズマが増加している現状を踏まえ、データに基づき、どの抗菌薬を選択するかを考え、それをエビデンスとして蓄積していくことが、抗菌薬の適正使用につながるのではないかと考えられる」と講演を終えられました。

 日頃から私たちが接種しているワクチンにより、肺炎球菌やHibによる小児の侵襲性感染症が減少し、肺炎球菌の抗菌薬に対する感受性が改善する一方で、肺炎球菌の血清型の分布に変化がみられ、インフルエンザ菌やマイコプラズマで抗菌薬に対する耐性化が進む現状が示され、小児の下気道感染症には今後に多くの課題が残ることを示唆する講演内容でした。

(左京・福持 裕)

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