実質引き上げ全くなし 目減りする入院時食事療養費
健康保険制度において入院時の食事は、「入院時食事療養費」として現物給付される仕組みとなっている(65歳以上の患者が療養病床に入院した際は「入院時生活療養費」)。ただし患者には「標準負担額」(一部負担)の支払いが求められ、2016年4月からの段階的引き上げが国会で決定されたのは記憶に新しい。
この「入院時食事療養費」は1994年10月、健康保険法改定により、それまで「療養の給付」として位置付けられていた給食料が廃止されるのに伴い導入された制度。「入院時食事療養費」は2段階に分かれており、厚生労働大臣が定める基準を満たす(1)が、1食につき640円、それ以外の(2)が1食につき506円とされている。ところがこの「入院時食事療養費」は、導入以来全く引き上げされていない。
入院時食事療養費(1)を例に取ると、導入直前の給食料が190点(1900円に相当)に対して、導入時の入院時食事療養が1900円と、制度変更前と同額でスタート。その後、消費税が5%になった1996年4月に1920円となったが、消費税引き上げ分2%にも満たない上乗せとなった。また2006年4月には、1食につき640円と変更されたが、算定の単位が「1日につき」から「1食につき」に変更されただけで、値段が丁度3分の1になったに過ぎない。以来、現在に至るまで変更はない。
2014年4月には消費税が8%になったが、その際も入院時食事療養費の引き上げは行われず、この間の食材料費、光熱費の高騰を勘案すると、入院時食事療養費は目減りしている状況である。入院時食事療養費(2)や入院時生活療養費に関しても、同様である。
協会は15年3月、会員病院を対象に入院時食事療養費「標準負担額」引き上げに係るアンケート調査を実施したが、入院時食事療養費が引き上げられていないことを不満とする声が多数寄せられた。この状況を問題視し、会員各位とともに、次回診療報酬改定に向け厚生労働省等への働きかけが必要と考えている。ぜひご協力いただくようお願いしたい。