安定財源確保し「選択と集中」/財政運営戦略
政府は6月22日、2020年度までの向こう10年間の財政の大枠を示す「財政運営戦略」を閣議決定した。社会保障費のような構造的な増加要因である経費については、国債発行によらず歳入・歳出両面の改革で安定的な財源を確保するとし、経済成長につなげるために、社会保障分野での「選択と集中」を進める方針を示した。
●サービス強化と負担増/パッケージで検討
戦略では、経済を本格的な回復軌道に乗せるため「医療・介護・健康」を重点分野の1つに掲げる新成長戦略を実行すると強調。社会保障・福祉サービスの強化と同時に、税や保険料などの国民負担を求めることなど、新たな歳入増を主要財源に需要・雇用創造が期待される分野の歳出に充てる政策パッケージの検討を進める方針を示した。
社会保障の再構築に向けては「国、地方、事業主、利用者本人それぞれが適切に役割分担を行い、社会保障制度を社会全体で支える必要がある」とし、国債に依存しない安定財源を確保する必要性を強調する一方、「国民負担が過大とならないよう、無駄の排除を徹底し、効率的な制度を構築する必要がある」とも指摘した。
●「歳出・歳入改革」具体的道筋示さず
財政健全化については、20年度までに国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を対GDP(国内総生産)比で黒字化するとの目標を掲げた。だが、内閣府が公表した試算によると、現在の経済成長を維持した場合、20年度のPB黒字化には21.7兆円の財源が不足。新成長戦略で掲げる名目3%、実質2%の経済成長を達成したとしても、20年度のPBは13.7兆円の赤字となる。
戦略では、財政健全化に向け「大きな視野に立った歳入・歳出改革を行う」とし、無駄の削減や使途の見直しと税制の抜本的改革を行うと強調。新規施策に恒久財源の手当を義務付ける「ペイアズユーゴー原則」の採用など、財政運営の基本的なルールを盛り込んだ。だが、PB黒字化に向けた具体的な道筋や財源は示されず、「今後、どこまで歳出削減を行うのか、どのように抜本的な税制改革を行い財源を確保していくのか、国民に早期に選択肢を示し、改革を実施しなければならない」との表現にとどまった。(6/23MEDIFAXより)