大臣私案、都道府県の保険運営に懸念も/後期高齢者制度の見直し検討会
後期高齢者医療制度の見直しに向けて舛添要一厚生労働相が設置した「高齢者医療制度に関する検討会」の初会合が9月25日に開かれた。委員からは、75歳で対象者を区分していることが国民の批判を招いているとの意見が大勢を占めた。ただ、制度自体の廃止や老人保健制度の復活については否定的な意見が相次いだ。
10月7日の第2回目では、後期高齢者医療制度の見直しに関する舛添厚労相の私案を基に意見を交わした(資料1)。市町村国保を都道府県単位とした上で後期高齢者医療制度と一体化させる私案について、委員からは都道府県に保険運営のノウハウがないと懸念する意見が上がったほか、市町村との職員人事交流や広域連合の必要性を訴える意見も出た。
舛添厚労相の私案は、市町村国保の運営主体を都道府県単位とした上で後期高齢者医療制度と一体化させることが柱で、75歳で区切らずに一本化するとともに国保財政の安定化を図るのが狙い。(1)被用者保険からの財政調整の仕組み、(2)国保保険料を統一する際の激変緩和措置、(3)都道府県が運営主体を引き受けるための条件整備―を課題に挙げている。
これに対し岩本康志委員(東京大大学院教授) は「保険運営に携わったことのない都道府県が運営できるかが最大の懸念。市町村単位でも財政調整をしっかり入れればできるのでは」と指摘した。
権丈善一委員(慶応大教授) は「医療計画が都道府県単位で動いていく中で、改善の方向性は自分の考えとまったく同じ」と大臣私案に賛意を示し、都道府県と市町村の職員人事交流などによって運営は可能だと訴えた。宮武剛委員(目白大大学院教授)も、都道府県単位での運営には賛意を示した上で「都道府県は知事会も含めてイエスとは言わないだろう」と指摘し、次善策として都道府県単位の広域連合による運営を提案した。岩村正彦委員(東京大大学院教授) は「広域連合は医療保険運営としてあまり使ったことのない仕組みだが、よりうまく動かすにはどうしたらよいかは検討の余地がある」と述べ、運営主体を都道府県とするか広域連合などにするかについて、当事者から意見を聞く必要性があると訴えた。
財源に関する問題についても意見が上がった。宮武委員は都道府県単位で運営する場合「保険料の統一のために相当の国費を投入しなければならない」と課題を挙げた。岩村委員は「税か保険料かについては、医療保険制度に対する発言権を誰が強く持つかという議論になる。税を入れることになれば、財務省の医療保険政策に対する圧力は強まることになる」と指摘した。
舛添厚労相は「制度の中での財政調整が難しいならば、税の比率は相対的に増やさなければならないだろう」と述べ、福祉目的税などによる対応の必要性も指摘した。権丈委員は「税を入れるためには明確な理由が必要」と指摘し、低所得者対策について税で対応すべきだと訴えた。(10/8MEDIFAXより)