大病院に財源集中、10年度改定前から/日医総研WP
日医総研はこのほど「最近の医療費の動向−2010年度診療報酬改定まで−」と題するワーキングペーパー(WP)をまとめた。09年度までの医療費の動向を分析した結果、急性期入院医療に手厚い財源配分となった10年度診療報酬改定以前から、大学病院や大規模病院に医療費が集中投入されていたとの見方を示している。
病院の設置主体別に医療費の推移を見ると、00年度には1.6兆円だった大学病院の医療費は、09年度には2.1兆円に増加。公的病院は6.6兆円から6.8兆円に、法人病院は7.7兆円から9.4兆円に、それぞれ増加した。一方、個人病院では00年度には7000億円だった医療費は09年度には3000億円まで減少。WPは「個人病院数自体が減少していることも一因」としている。
00年度を100としたときの09年度の1施設当たり医療費(収入)は、大学病院が129.0、公的病院が113.4、法人病院が113.9、個人病院が110.3だった。WPは「大学病院が突出して伸びており、そのほかは個人病院の一時期を除いて、ほぼ同じ傾向で推移していた」としている。
00年度を100としたときの09年度の1施設当たり医療費(収入)を病床規模別に見ると、「500床以上」が127.0、「300−499床」が113.3、「100−299床」が110.2、「20−99床」が111.8で、WPは「500床以上だけが突出して伸びており、ほかの病床カテゴリはほぼ同じ傾向で推移していた」としている。
これらの結果を踏まえ、WPは「10年度の診療報酬改定では、急性期入院医療に手厚い財源配分が行われたが、それ以前から、大学病院、大規模病院に医療費が集中投入されていたことが確認できた」と指摘。中医協での診療報酬改定に関する議論について「医療経済実態調査の損益差額に着目しているが、経営努力により黒字化した場合には、診療報酬が引き下げられてしまうこともある」とし「診療報酬そのもの、つまり医療費(医業収入)がどう伸びているのかも考慮すべき」とした。(9/30MEDIFAXより)