外来管理加算の算定要件見直しで医療現場に混乱
あらためて中医協に改善を求める
保険医協会は7月22日、一般病床200床未満の病院及び診療所を対象に「外来管理加算の算定に関するアンケート」を実施した。アンケートは8月4日までに病院41通(回収率42・3%)、診療所80通(回収率4%)が寄せられた。アンケートの結果から、◇病院の41・4%、診療所40・3%が、改定前に比べ、▲20%を超えて外来管理加算を算定できなくなっている、◇算定要件の解釈によって、対応の差が顕著である、◇「5分ルール」「時間要件の拡大」には9割が反対している―ことが明らかになった。
日本医師会の緊急レセプト調査(4〜6月分)では、外来管理加算の算定回数は診療所で前年同期比26・4%、病院で28・0%と大幅に減少している。この結果を基に、中医協において、日本医師会の藤原委員が外来管理加算の算定要件に関する議論の再開を強く求めているにも関わらず、遠藤会長は「検証部会の検討を経て次回改定までに議論する」方向だ。それでは、最短で09年4月以降にしか改善は見込めず、地域医療を支える中小病院、診療所の経営に取り返しのつかない悪影響を与えかねない。京都府保険医協会としては、「5分ルール」が京都の医療機関に与える影響を調査し、調査結果を中医協全委員に示し、「5分ルール」の即時撤回等の改善を求める目的で本アンケートを実施した。アンケートの詳細は次の通り。
「外来管理加算が算定できなくなった」外科系診療所に大きな影響
病院の結果は、外来レセプトの08年3月診療分の枚数に対する08年4月診療分の枚数の平均値▲5・2%、中央値▲2・6%。再診料算定の08年3月分の回数に対する08年4月分の回数の平均値▲1・5%、中央値▲1・7%だった。
診療所の結果は、外来レセプトの08年3月分の枚数に対する08年4月分の枚数の平均値▲3・1%、中央値▲2・9%。再診料算定の08年3月分の回数に対する08年4月分の回数の平均値▲3・9%、中央値▲1・4%だった。
アンケートの調査目的である、外来管理加算算定の08年3月分の回数に対する08年4月分の回数は、病院の平均値▲11・5%、中央値▲13・43%だった。外来管理加算算定率が最も低くなった病院は▲58・5%となっており、逆に算定率が上がった病院はプラス59・2%のところもある。「算定要件の解釈により、算定を控えるところと、変わらないところがあり、対応がバラバラ」との意見もあり、医療現場の混乱が顕著になっている。
病院の外来管理加算算定回数の減少数の平均は290・7回で、中には最大で1818件も算定回数が減少した病院がある。
病院について、外来管理加算の08年3月分の算定回数に対する08年4月分の算定回数の分布は、表1の通り(有効回答数41件)。
表1 外来管理加算の08年3月分の算定回数に対する08年4月分の算定回数(病院)
4月分/3月分 | 件 数 | 割 合 |
0%以上 | 7 | 17.1% |
0% | 0 | 0.0% |
▲20% 〜 0%台 | 17 | 41.5% |
▲40% 〜 ▲20%台 | 14 | 34.1% |
▲60% 〜 ▲40%台 | 3 | 7.3% |
▲80% 〜 ▲60%台 | 0 | 0.0% |
▲100% 〜 ▲80%台 | 0 | 0.0% |
診療所の外来管理加算算定回数は平均値(有効回答数62件)▲21・5%、中央値▲14・8%だった。「0件になった」との回答が3件あった。減少数の平均は100・7回で、中には最大で1000件も算定回数が減少した診療所がある。逆に算定率が上がった診療所は、最高でプラス37・7%のところがあった。対応の格差、混乱は診療所も病院と同じであるが、全く算定できなくなっている診療所があることは、問題である。
内科系・外科系の別(重複あり)でみると、内科系(内科、精神科、小児科。42件)の平均値▲10・2%、中央値▲7・0%だった。外科系(外科、整形外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科。21件)の平均値▲43・2%、中央値▲43・8%だった。
診療所について、外来管理加算の08年3月分の算定回数に対する08年4月分の算定回数の分布は、表2の通り(有効回答数62件)。
表2 外来管理加算の08年3月分の算定回数に対する08年4月分の算定回数(診療所)
4月分/3月分 | 件 数 | 割 合 |
0%以上 | 17 | 27.4% |
0% | 3 | 4.8% |
▲20% 〜 0%台 | 17 | 27.4% |
▲40% 〜 ▲20%台 | 12 | 19.4% |
▲60% 〜 ▲40%台 | 2 | 3.2% |
▲80% 〜 ▲60%台 | 3 | 4.8% |
▲100% 〜 ▲80%台 | 8 | 12.9% |
『全国保険医新聞』08年7月5日号に掲載の方法、つまり「外来管理加算の算定回数÷再診料の算定回数」の08年3月診療分と08年4月診療分の対比でみると、病院の算定率は平均値85・3%、中央値90・5%、内科系診療所の算定率は平均値90・4%、中央値84・0%、外科系診療所の算定率は平均値78・5%、中央値33・2%だった。外科系診療所で算定できなくなっていることが分かる。(表3)
表3 外来管理加算の算定率対比
2008年3月 | 2008年4月 | 4月/3月 | |||
診療所 | 内科系 | 平均値 | 83.3% | 75.3% | 90.4% |
中央値 | 80.5% | 67.6% | 84.0% | ||
外科系 | 平均値 | 68.3% | 53.6% | 78.5% | |
中央値 | 70.5% | 23.4% | 33.2% | ||
病院 | 平均値 | 52.0% | 44.4% | 85.3% | |
中央値 | 47.9% | 43.3% | 90.5% |
日本医師会によれば、外来管理加算の見直しによる財源移転は当初、百数十億円程度の予定だったが、緊急レセプト調査によれば、800億円超と試算されている。今回、京都府保険医協会が行った調査は母数も少なく、日医調査ほどの数値は表れていないが、それでも影響が厚生労働省のアナウンスを上回ることは明らかである。
「5分ルール」には9割が反対
外来管理加算の算定要件のうち「時間要件(概ね5分を超える)」について、病院は「反対」90・2%、「賛成」2・4%、「分からない」0%。診療所は「反対」86・3%、「賛成」1・3%、「分からない」3・8%だった。なお、「その他」の中には、「設定時間に論理的かつ客観的な根拠がないなら反対」「以前より5分以上かけて説明している」との意見もあった。
「『詳細』な患者からの聴取事項や診察所見の要点のカルテ記載」について、病院は「反対」78・0%、「賛成」12・2%、「分からない」0%。診療所は「反対」77・5%、「賛成」3・8%、「分からない」6・3%だった。なお、「その他」の中にも、「かかりつけ医となっているなら詳細にはいらないと思う」「必要なことは正確にカルテ記載するべき」「そもそもカルテには、医師の診療上、必要と判断したものを記録するものと理解している」「必要事項の記載は要領よくまとめる」「必要を認めない」「要点の記載には賛成だが、『詳細な』要点とは意味不明」「記載はすべきだが、『詳細』というのは日常診療でなかなか困難」との意見があり、カルテ記載の必要性は認めつつも、課長通知で求められている内容への困惑が表れている。
時間による報酬格差は許せない
08年度の改定では、精神科専門療法の「通院・在宅精神療法」にも「5分ルール」が導入された。従来から初診時は「30分超」という時間要件が導入されていたが、再診時にも時間要件が拡大されたことになる。医師が行う基本的な診療行為に時間要件が導入され、拡大されることは重大な問題があると保険医協会は考える。
「医師が行う基本的な診療報酬に時間要件が導入され、算定要件となること」について、病院は「反対」92・7%、「賛成」4・9%、「分からない」0%。診療所は「反対」87・5%、「賛成」1・3%、「分からない」5・0%だった。
さらに会員より寄せられた、08年改定における外来管理加算の算定要件以外の不合理点は、中医協に改善を求めていきたい。
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【京都保険医新聞第2654・2655合併号_2008年9月1・8日_2面】