地球/谷口 謙(北丹)
某日 午前5時45分
目覚め
カーテンの透き間を覗く
空を染め
正面 赤い太陽が出る
中国山地の古い山並みの間
鮮やかな光線を散らし
少しずつ 少しずつ
円形を現わしてくる
毎日の月並な風景
古い昔
幼少のころ よくこの風景を見やった
お父ちゃん
あの山の向うに何があるの
遠い遠い海がある
父は口髭を捻り
いとしげにぼくに言った
子供心
でも
少し成長し
小学校に入った頃
山の向うは日本海が
黒い海を湛えているのを知った
太陽も 月も
子供の頃はつれない
朝日の美しさ
月の変形
ぼくは老い
その老いの先
何かをぼくは推察した
おだやかな表情の
ぼくより少し若い婆さんの死に会った
平和があり
老の果て
こんなおだやかな晩年がほしい
午後6時31分
朝と同じ所から
欠けた月が出た