地域連携「ハブ化構想」で意見書/打ち合わせ会で診療側
中医協(会長=森田朗・東京大大学院教授)と社会保障審議会・介護給付費分科会(分科会長=大森彌・東京大名誉教授)の打ち合わせ会が10月21日開かれ、2012年度の診療報酬と介護報酬の同時改定に向けた医療と介護の機能分化や在宅医療・介護をめぐる方向性について、両会からそれぞれ選抜された計7委員が議論した。打ち合わせ会は、中医協診療側委員からの提案で実現したもので、この日は診療側委員の総意として、地域医療連携の「ハブ化構想」を盛り込んだ「医療と介護の連携議論に必要な視点について」と題する意見書を提出した。
中医協診療側の西澤寛俊委員(全日本病院協会長)の説明によると、医療と介護連携のシステム構築の推進に向けて「地域全体の医療と介護のコーディネーター役を担う地域連携拠点(ハブ)を一定の圏域ごとに設置することが不可欠で、医療と介護に関わる人、モノ、組織、情報を包括的にコーディネートする役割が重要だ」とした。
また、「施設間単位での単線型機能連携から地域単位でのネットワーク型機能連携への転換を進める上でも、地域特性を踏まえた形で、多職種・多施設間での連携を地域の中でシステム化していくことが必要」と指摘。「しかし、現行の診療報酬体系では、基本的に個々の医療行為に点数を設定しているため、連携拠点を核にした地域における包括的ネットワークを評価する構造になっていない」と問題提起した。
次期同時改定に向けて中医協と介護給付費分科会では、「利用者の生活自立」を支える医療・介護包括的ネットワークのシステム化、連携ネットワーク構築への評価、という視点も持ちながら議論していくことが必要だと提言した。
診療側の意見書を受け、介護給付費分科会の田中滋委員(慶応大大学院教授)ら出席委員からは、おおむね賛同する声が挙がる一方で、介護給付費分科会の池田省三委員(地域ケア政策ネットワーク研究主幹)は「賛同できるが、地域連携拠点・ハブの責任所在はどうなのか。コーディネート役の人材をどこに求めるのか。ケアマネジャーが望ましいのだろうが、医療との連携などうまく進んでいない」と質問した。
これに対して、中医協診療側の安達秀樹委員(京都府医師会副会長)は「ハブは、地方自治体が核となってつくっていくべきだろう」とし、京都府で動き出した地域医療包括ケアシステムについて解説した。その中で「コーディネーター役をケアマネジャーとするかどうか議論したが、当面は府職員が個別事例に対応しながら、ハブ化への第一歩が進み出した」と述べた。
中医協支払い側の白川修二委員(健保連専務理事)も、診療側の意見書は一つの理想型として一定の評価をしながらも、理想と現実のギャップをどう埋めていくか、長期の工程表を作成していくことが必要とした。
また白川委員は、医療と介護のシームレスなサービスの重要性を指摘した上で、厳しい財政面から費用対効果を考慮した効率のよいサービスの提供を検討していく必要性があるとも指摘した。西澤委員は「医療と介護の連携はまだまだだが、こうした議論を両会で議論することが必要だ。今後、システムづくりを進めていく」と述べた。(10/24MEDIFAXより)