地区医師会との懇談会/宇治久世・左京・下京
在宅への地区の取り組みを強化
【宇治久世医師会と懇談】
1月11日 うじ安心館
協会は宇治久世医師会との懇談会を1月11日に開催した。地区から20人、協会から6人が出席、宇治久世医師会・高田久之理事の司会で進められた。
同会・大石嘉啓会長は、2012年度診療報酬改定率が0・004%で決着したことにふれ、「なんとかプラス改定となったが、医療を再建させるためには不十分」との評価を示すとともに、「今後改定の中身についても、適宜情報提供をお願いしたい」と述べた。その後、関理事長からの挨拶、協会からの情報提供、意見交換を行った。
地区から、九州地方で在宅での看取り率が一気に上昇したという、「スーパー在宅医」とも評される開業医を例に挙げ、「厚労省は、そういった医師をモデルにしているようだが、我々も日常診療や訪問診療に、精一杯従事している」と言及、加えて「今後、地域医療の在り方を考えるにあたり、在宅医療を行う医師のマンパワーをいかに活用するかについて、医療側からの提案が必要である」と強調した。また診療報酬に関しては、「在宅療養支援診療所やその他在宅医療に携わる医療機関について、診療報酬という形できちんと評価すべきだ」との認識を示した。協会からは、「政府は、社会保障と税の一体改革により、在宅医療の充実や地域包括ケアシステムの構築を目指している。しかし現在、独居の高齢者が圧倒的多数であり、家族が介護しているケースはわずか数%である。このような状態で本当に機能していくのか甚だ疑問。絵に描いた餅になるのではないか」との懸念を示した。
宇治久世医師会では、月に1回ペースで在宅医療研究会を開催し、副主治医制の導入などを含め、地域の在宅医療の在り方について検討している。今年1月からは、在宅医療部会準備会として活動し、宇治久世医師会のホームページへのアップ、地域内の地域包括支援センター長に向けての説明会を予定している。地区からは「個人開業医としてだけではなく、地域医療を守る一員として地域包括支援センターや訪問看護ステーションとの連携を強めていきたい」との意向が示され、協会からも、「ぜひそういった活動を協会としてもサポートしたい」と述べた。
26人が出席して開かれた宇治久世医師会との懇談会
費用削減ありきでは提供体制が劣化
【下京西部医師会と懇談】
1月13日 下京西部医師事務所
協会は下京西部医師会との懇談会を1月13日に開催。下京西部医師会から16人、協会から6人が出席した。懇談会は下京西部医師会・岡林秀興副会長の司会で進行した。
同会・山下琢会長から「時局に応じた社会保障・税の一体改革、診療報酬同時改定問題、原発問題、指導・監査問題など、多岐にわたるお話をお聞きしたい」と挨拶が行われた。続いて協会から関理事長の挨拶の後、「社会保障・税一体改革案について」「2012年診療報酬・介護報酬同時改定を巡る動き」などについて情報提供を行った。
意見交換では、社会保障・税一体改革について、「これから団塊の世代が、有病率の上がる年齢世代へとさしかかる。当然、患者数も増加すると考えられるが、国の方向性は在院日数短縮だ。この体制で、本当に急性期に対応ができるのか」との質問に対し、協会からは「ともかく、社会保障費削減ありきから始まっている。一見、入所施設から在宅へという流れは開業医が中心になって支えるように見えるが、実際、想定されていることは看護・介護職による在宅への対応である。これは医療提供体制の劣化に他ならない」と回答。
また、診療報酬・介護報酬の同時改定については、「訪問診療について、将来的には看取りだけになるなどの可能性はあるのか」との質問に対し、「実際には地域の中で、医療ニーズは存在しており、看取りだけになるということは考えられない。しかし、基本は『かかりつけ医』といわれる在宅療養支援診療所を中心とした訪問看護や訪問リハビリが主体となってくるのではないか。また、支援診の役割は打ち出されているが、その他の開業医の役割は全く触れられていない。支援診以外の診療所が行う在宅医療について、どう評価するのか。ここは、大きな問題と認識している」と回答。
その他にも、地域包括ケアに象徴されるような、医療費抑制のために行われる在宅を中心とした医療提供体制への改変の流れをどう押しとどめるのか、また、いったん在宅を中心とした医療提供体制がある程度整ったと判断されると、連動してそこに関わる保険点数が下げられるだろう、などの危機感をもった意見が出された。
その他、地区から出された、原発に関する協会の考え方については、協会の方針について解説。「脱原発」という点においては、誰しも異論のないところと考えるが、その後のエネルギー政策やエネルギー安全保障に対する考え方については、議論を重ねる必要があると述べた。
懇談会終了後には、「『指導』情報交換会」を開催し、青木淳副会長の閉会挨拶をもって終了した。
22人が出席して開かれた下西医師会との懇談会
行き場ない高齢者作らない“在宅”を
【左京医師会と懇談】
1月14日 京都ホテルオークラ
協会は左京医師会との懇談会を1月14日に開催した。出席は、地区20人、協会7人。懇談は、左京医師会・赤木太郎副会長の司会で進行した。
同会・原山憲治会長から「政治・経済は不安定で、いま我国の医療や社会保障制度は、質の高い状態を維持するのは難しい状況にある。医療専門家集団が日本の医療制度を守るために、改善・拡充に賛同する人々も巻き込んで、保険医協会にはぜひとも頑張ってほしい」と開会挨拶。続いて、関理事長の挨拶、1. 協会各部会からの情報提供、2. 社会保障・税の一体改革案、3. 2012年診療報酬・介護報酬同時改定を巡る動き―について解説し、意見交換に入った。
意見交換では「消費税10%への引き上げと医療非課税問題に対して、協会は何か働きかけをしているのか」との質問に対しては「医療は消費税課税の精神になじまないので、かねてからゼロ税率を要望している。増税の是非について議論が盛り上がることは、ゼロ税率実現の一つのチャンスとも言え、ぜひ実現に漕ぎ着けたい」と答えた。
次に地区から「我々団塊の世代の今後を考えると、医療費も介護費も増えるだろう。将来、病院や在宅で最期を迎えられない人は野垂れ死にするような時代の到来を考える。そうならないために今、我々はどう活動を展開すべきか」との意見に協会は、「難しい問題だ。政府は2025年まで想定し、それなりの改革案を提示してきた。高齢社会では、地域密着型医療が求められ、在宅医療を進める上でも、在宅療養支援診療所や同病院とともに診療所が看取りなどで果たす役割は大きい。診療所は日本の医療を支えていると自負している。病院勤務医の負担軽減の基本でもある。左京医師会では、大学病院も中小病院も、大きな施設も点在し、地域全体を見渡し、しかも他の各職種との連携も早くから提唱され、介護と医療を提供されている。全国的にも先進的に取り組まれている。そこで問題になっている実態をぜひ発信してほしい」と答えた。
最後に、地区から「患者側から見ると、特養も老健施設も満床で、医療も介護も、行き場のない高齢者は多い。国の推奨する在宅医療の実際の目的は医療費削減で、本来の意味の在宅ではない。マスコミもその点を指摘しない。我々医療者がレクチャーし、政治を動かさねばならない。協会と一緒に頑張っていきたい」との発言があり、閉会した。
27人が出席して開かれた左京医師会との懇談会