地区との懇談すすむ
協会は2011年度の各地区医師会との懇談会をすすめている。今年度の協会からのテーマは、「社会保障・税の一体改革成案」「2012年診療報酬・介護報酬同時改定を巡る動き」について。また今年度は懇談会終了後に「『指導』情報交換会」を開催し、京都における個別指導等の実施状況や指摘事項等の資料を参考に意見交換を行っている(希望地区のみ)。
高点数理由の集団的個別指導は問題
【中京西部医師会と懇談】
(11月28日 中京西部医師会事務所)
協会は中京西部医師会との懇談会を11月28日に開催。地区から17人、協会から5人が出席した。
中京西部医師会・尾崎信之会長は「診療報酬改定やTPP問題への対応を巡り、医師会にあまり好意的でない報道がされ無力感を感じている。こうした問題がこれからどうなっていくのかを協会にききたい」と挨拶。続いて協会から、関理事長の挨拶の後、各部会からの情報提供を行い、「社会保障・税の一体改革成案」「2012年診療報酬・介護報酬同時改定を巡る動き」について解説。また、地区からテーマとして「近畿厚生局の集団指導」が挙がっていたため、「『指導』情報交換会」を併せて開催し、意見交換を行った。
意見交換では地区から、高点数を理由に集団的個別指導の対象とされることについて、在宅医療などで、どうしても高点数になってしまう医療機関が萎縮診療にならないように働きかけなどできないか。また集団的個別指導の後で改まらない場合は個別指導になるのか、との質問があった。
これに対して、協会や保団連は高点数を理由にした集団的個別指導を止めるよう要求している。また、集団的個別指導を複数回受けて改まらない場合は、個別指導に移行するという発言が行政からあったが、09年までは高点数を理由とした個別指導は行われていないと回答した。
また、個別指導の現状や生活保護医療を巡る問題などに話題がおよび、意見交換と情報提供が行われた。
さらに懇談に先だって協力いただいた受診抑制実態アンケートの意義について問われ、「診療提供時の困ったこと」への回答で、「(患者の経済状況を慮って)治療を控えた」「医療機関が一部負担金を被ってしまっている」などがあり、医療担当者として困るという主張とともに、短期証や資格証明書の発行は皆保険制度下において問題であるという折衝を引き続き行政に対し行っていきたい。これまでも調査結果は、マスコミや国会議員にも配り実態を知らせてきた。特に自由記載欄はよく読んでもらえているので、具体的に記載してもらえると力になると、あらためて調査の意義を訴えた。
22人が出席して開かれた中京西部医師会との懇談会
一体改革シナリオで地域の医療どうなる
【伏見医師会と懇談】
12月12日 伏見医師会館
協会は伏見医師会との懇談会を12月12日に開催。伏見医師会から17人、協会から7人が参加した。
伏見医師会の松本恒司副会長の司会で開会。中山治樹会長から「協会が取り組む課題は多岐にわたり、今も診療報酬・介護報酬の同時改定、TPP、一体改革などで大変かと思う。今日は忌憚のない発言をお願いし、医師会、協会の互いの発展のために役立てていきたい」と挨拶。続いて協会の関理事長の挨拶の後、各部会の担当理事から「社会保障・税一体改革」や「診療報酬・介護報酬の同時改定」などの説明を行い、質疑に移った。
社会保障・税一体改革の改革シナリオが示す医師数抑制について意見交換を行った。地区から、医師以外の職種は増加させる方向であるが、医師は1万人減少させるとしている。厚労省は在宅医療を強化しようとしている。在宅医療は施設医療よりマンパワーや時間が必要になり、医師もより多く必要となる。そのことを踏まえて、厚労省はどのくらいの医師が必要であると試算しているのか。その試算を検討し追及してみてはどうか、との意見が出された。
協会からは、医師数を抑制するのはおかしいと述べた上で、一体改革が示す内容の説明を行った。改革シナリオでは現状の医師数を減らすのではなく、現行の医師増ペースを継続した場合の2025年時点の医師数よりも1万人減にするというもの。外来患者数の5%減も掲げており、それにより医師数の抑制を考えている。本来在宅医療にはマンパワーが必要である。しかし一体改革では在宅移行時には医師が診察をするが、在宅医療においては医師以外の職員が患者を看ていくことを想定しており、十分な医療を考えていない。当然、医師が今よりも増えるのは見込んでいるが、増えるペースを減らすということだ、と解説した。
次いで診療報酬・介護報酬の同時改定について意見交換。地区からは、財源がないので診療報酬が上がることはないのではないか。しかし地域の中核病院になっている公立の中小病院は赤字経営で、地域医療を守るのが大変だ。政府はそういう医療機関も見捨てる方針なのか。医師を集めるには給与を引き上げないと無理であるが、資金もなく給与も上げられず医師が集まらない。そうした医療過疎地域への施策はないのか、との質問が出された。
協会から、中医協の中で、医療提供が困難な地域における病院の課題が議論され、看護要員等の施設基準の緩和が検討されているようである。ただし抜本的改善は全く言及されていないと説明した。
懇談ではその他に、「社会保障財源に関する財務省と政治家の問題」「開業医・勤務医の収入比較のマスコミ報道について」「消費税増税の中身とは」等について意見交換が行われ、懇談を終了した。
24人が出席して開かれた伏見医師会との懇談会
国は地域医療の実態に基づく計画を
【乙訓医師会と懇談】
12月19日 乙訓医師会事務所
協会は乙訓医師会との懇談会を12月19日に開催。地区から9人、協会から5人が出席し、乙訓医師会・稲田安昭副会長の司会で進められた。開会に際し、乙訓医師会・片岡卓三会長は「抱えている課題は多いが、地区医師会単位ではなかなか行き届かない、できないことがある。協会の担っている役割を明確に出し、我々乙訓医師会をはじめ京都府全体の会員の援助をしていただければ嬉しい」と挨拶された。
続いて協会からは、関理事長の挨拶の後、1. 各部会からの情報提供、2. 社会保障・税の一体改革成案、3. 2012年診療報酬・介護報酬同時改定を巡る動き、4. 指導の現状と問題点―について解説。議題ごとに意見交換を行った。
意見交換では地区より、ワクチンの消費税について、「子宮頸がんのワクチンは1本1万円くらいするため、自費が1千万円を超えると消費税課税事業者になる医療機関がある。ゼロ税率をどう考えるか」との質問が出された。協会からは「以前よりずっとゼロ税率を求め運動している。損税解消のためにはゼロ税率しかないと考える。社保の診療報酬は非課税とされているが、厚生労働省の言では、診療報酬は医療費ベースで1・53%付加されている。逆に言うと、内税化されて、患者さんに支払ってもらっていることになる。非課税の趣旨に反しており、ゼロ税率が最善と考えている」と回答した。
社会保障・税の一体改革成案のうち、後発医薬品の更なる使用促進について、「全体の30%を後発医薬品にするとのことだが、開業医に影響はあるのか」との質問が出され、協会は「現在、具体的なペナルティはないが、生活保護患者を皮切りに、後発医薬品に強制的に変えていく方向性はある。処方せん様式の見直し案の中で、個々の薬剤について、後発医薬品の使用を認めない場合は署名をするとされている」と述べた。
医師のマンパワー必要量の見込みについて、「1万人減とあるが、医師の業務を医師以外の業種に行わせることによって、医師の必要性を下げる。往診等の回数を減らし費用を削減するということか」との質問には、「在宅医療の最初の計画時のみ医師が携わるという話も出されている」と回答した。
また、「乙訓医師会は往診できる医師のマンパワーが減少しつつある。会員構成は60歳代がピークで、体力的にも夜中の往診への対応が厳しくなっている。新規開業医が減り廃院が増える中で、在宅医療の旗振りをしても、患者を受け入れるマンパワーがあるのか。実態を把握し、国に“絵に描いた餅”であることを証明する必要がある」との意見が出された。
その他、新規開業医数の動向、医療保険と介護保険の役割、カルテ記載の留意点、保険請求の算定などについて活発な意見交換が行われた。
14人が出席して開かれた乙訓医師会との懇談会