国連も懸念示す特定秘密保護法
反対を表明する何千人もの人たちが国会を取り巻く中で特定秘密保護法が可決された。
石破自民党幹事長が反対の意思表示をするデモを「テロ」と言って攻撃したことは、この法律の危険性を明確に示すものであった。国民の知る権利を奪うばかりか、日本国憲法が定めている基本的人権を侵すものとして、多くの人々が反対や疑問の声を上げたのは当然である。京都新聞(共同通信)の調査では反対は過半数を超え賛成は2割にも満たない。十分な審議抜きに国会で可決すべきでないと社説は述べた。多くの疑問や反対の声を置き去りにした強行である。国連(ピレイ人権高等弁務官)も懸念を表明している。
背景には、日米同盟を基軸にして軍事大国化を進めようとする安部首相の危険な政治路線がある。日本版NSC創設を先行させ、集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更、武器輸出三原則形骸化、そして憲法九条に狙いを定めた日本国憲法改悪への布石が後に続く。
医師にも重大な問題だ。特定秘密を取り扱う者には適性評価を求めており、精神疾患などを掲げているのは差別的だ。医療機関には病歴を当局に回答する義務が課せられた。「たとえ脅迫のもとであっても、人権や市民の自由を侵害するために私の医学知識を使用しない」と謳うジュネーブ宣言(世界医師会の医の倫理を定める)に真っ向から対立する。患者が通報を危惧して病歴を告げないことも考えられる。信頼関係が損なわれれば安全安心で質の高い医療は成り立たない。
また、医学研究の成果をテロに利用される可能性があるとして、論文や学会での発表が制限される。2011年にインフルエンザウイルス研究論文がアメリカ当局によって公表を差し止められ、世界の研究者から批判が巻き起こったことは記憶に新しい。研究には透明性が欠かせない。ディオバン事件でも明らかになったことだ。
戦争は命と健康に対する世界的脅威である。このため、協会は反核・平和運動や医の倫理についても現代的な課題として重視してきた。これからが鋭く問われている。これらの取り組みを進めながら憲法違反の特定秘密保護法については廃止を求めたい。