国民がその価値を知らないと奪われる 堤未果氏が国民皆保険を守ろうと訴え
TPPを巡る情勢が再び緊迫する中、TPP京都ネットは京都食健連とともにジャーナリストの堤未果氏を講師に5月23日、キャンパスプラザ京都で講演会を開催。市民350人が参加した。講演後には京都駅前から烏丸通を、五条通までトラクターを先頭にデモ行進し、TPP「ノー」を訴えた。
堤氏は「報道されないアメリカの真実と日本の選択」と題して講演。グローバル企業と金融業界の巨大化で、あらゆるものが商品とされ、国民の健康や安全よりも株主報酬が最優先され、歪みが深刻化している米国の現状を報告。
政治やマスコミ、学者までもが企業に買われ、民主・共和どちらの党に政権がかわってもスポンサーとして力をふるい、マスコミからは掘り下げた報道がなくなり、本当に大事なことが国民に伝えられなくなっていると指摘。
グローバル企業がTPPで狙うのはとりわけ日本の国民皆保険制度。TPP交渉が思うように進まない中、別の一手、TiSA(新サービス貿易協定)も仕掛けられている。これに対し、日本の内側からもアメリカの望む医療の商品化が進められようとしている。TPPと双子のような国家戦略特区や患者申出療養などを次々と送り出しているのが、宇沢弘文氏が「ヒトラーのやり方」と批判した経済財政諮問会議をはじめとする有識者会議。選挙で選ばれていない財界メンバーである「民間議員」が政策をつくり、それを閣議決定して次々と法制化していく。このような流れは何とか止めなければならないと、警鐘をならした。
オバマケアには多くの米国民が期待したが、被保険者にとっても医師にとっても悲惨な現状がある。民間保険会社のために民間保険会社がかいた法律で、約3000ページという到底読み切れない法案のため民主党議員も抵抗できなかった。無知は弱さとなる。世界が嫉妬する国民皆保険制度の価値に、日本国民が気づかないと奪われてしまうだろう。先人が努力して作り上げたものを自分たちで守り良くしていかねばならない。そして、最速で高齢化する日本に世界が注目しており、医療を商品として使い捨て市場にしていくのか、最期まで幸せに過ごせる模範モデルとして輸出してゆくのか。決めるのは私たち自身だと、訴えかけた。