国家主権を制約する自由貿易協定は適切か!?
米韓FTAの現状を杉島弁護士が報告
TPP参加反対京都ネットワークは11月21日、「TPPに反対する弁護士ネットワーク」呼びかけ人の一人である杉島幸生弁護士を講師に「米韓FTA(自由貿易協定)の中身と現状」について拡大学習会を開催。杉島氏はデータをもとに、TPPのモデルとされる米韓FTAの現状を明らかにした。
韓国は、GDPは1・3兆ドルと日本の2%程度にすぎないが、輸出依存度は約60%と日本の20%に比べて高く、国際競争力の強化を国家戦略とし、多くの国との間でFTAを締結している。
また、韓米FTAは24章からなるが、EUは韓国とのFTAで、このうちISD条項やラチェット条項を含む分野など10章分を結んでいない。多国籍企業により国内が荒らされることを避けるためにどの国とも締結しないとしており、そうした姿勢は学ぶべきではないかとした。
米韓FTAによる対米貿易の拡大と引きかえに韓国国民はなにを代償にしたのか。FTA論争で問題となった4分野(?牛肉?自動車?医薬品?映画)では、牛肉は40%の関税を毎年2・7%減とし15年で撤廃することから畜産離れが進行。自動車は輸出が伸びてはいるが、国内規制(低酸素車協力金制度)が米国車の輸入障壁にあたると実施が延期されている。医薬品は価格決定方式が原則競争的市場導入価格に変更されて高薬価となり、ジェネリック薬について承認の異議申立権によりつくりにくくなっている。映画は上映日数の40%を韓国製とする制度が20%に緩和。当初聖域とされていたコメも、いつのまにか見直しとされ不満が高まっていると報告。
また、企業が国家に損害賠償請求ができるISD条項により、すでに訴訟が起こされている。FTAの影響で、法令23、施行令16、施行規則18、公示・例規9、合計66件の変更(韓国政府発表)がされていることを紹介。
この現状を受けて、自由貿易協定は本当に必要なのか、▽自由貿易は各国経済を発展させるのか▽国家主権の制約という方法は適切なのか▽他国の主権(民意)を制約することに対する配慮は不要なのか―といった視点から見直すべきだとした。