“喧嘩釣り”を楽しむ

“喧嘩釣り”を楽しむ

西原 寛(与謝)

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 ピカッと光るとターンとおとりが持っていかれる。ある夕方60〜70cm位のつるっとした石の並ぶ膝くらいの深さのところでの出来事である。石を挟んで70〜80cm離れた所でキラッと閃光が、そしたらターンとおとりが持っていかれたのである。3度続けて起こった。今日はもう帰ろうと思い、まだ明るいのに帰ってきたことがある。

 鮎の友釣りとは、手持ちの鮎を縄張りを持っている地鮎の縄張りに誘導して入れると、ものすごい剣幕でおとり鮎の腹に頭突きで体当たりをしてくる。その習性を利用して釣る釣り方である。友釣りとはよく言ったもので、私は「喧嘩釣り」だと認識している。闘牛・闘犬・闘鶏・闘魚などは、ギャンブルの対象になるほど観ている者の気持ちを高揚させてくれるものだ。友釣りとはそんなドキドキを自分ひとりで、手持ちの鮎と相手の鮎との駆け引きを独り占めして楽しむ釣りだ。

 同級生を友釣りに引き込み、その同級生が釣りはほとんどしたことのない職場の同僚に説明したら、「そらぁ面白いはずや!!」と言ったそうだ、「何で!?」と聞き返したら、その同僚は「普通の釣りは、えさを付けて一匹が釣れてくるのに、友釣りは、一日中一匹釣れた状態でいて、釣れたと言って二匹が上がってくるんやモン!!」とのことであった。まさしく言われてみればそうである。釣り仲間にこのことを言うと「ちょっと違うけどね」とは言うものの、強くは否定しない。

 またある時は、おとりの向こうから地鮎が向かって来た時、口を開けたり閉めたりしてエラの赤いのと口の中の白いのとを見せて、「この野郎出て行け!!」と言わんばかりのように思えたことがあり、日本友釣り同好会の先輩にそのことを話したら、君も見たなとばかりニヤッと笑われたことがあったが、まさしく友釣りとはそんな釣りである。

 「壱場所・弐おとり・参技術」と言って、場所が良ければ、おとりが良ければであるが、技術にて何とか良いおとりを釣れば、そのおとりが良い場所へ泳いで行ってくれてガツーンと釣れる。強い鮎だと同じ20cm位のおとりを、白泡の濁流を上流に引きずって泳いで行く強い遊泳力の者がいる。それを引きずり下ろすようにしてゲットした時など「もう最高!!」

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